社内DXが進まない会社の共通点

― 技術の問題ではなく「意思決定」と「構造」の問題 ―

「DXを進めたいが、なかなか現場に浸透しない」
「ツールは導入したが、業務は何も変わっていない」

これは、多くの企業で聞かれる悩みです。

しかし、20年以上IT・Webの実務に関わってきた立場から見ると、
社内DXが進まない原因は、ほぼ共通しています。

はっきり言います。

DXが進まない会社は、ITが弱いのではありません。
経営と組織の構造が、DXに向いていないだけです。


DXを「IT導入」と勘違いしている

最も多い勘違いがこれです。

  • 新しいツールを入れた
  • クラウドに移行した
  • ペーパーレスにした

これらはDXではありません。単なるデジタル化(デジタイゼーション)です。

DXとは本来、

デジタルを使って「業務構造」「意思決定」「価値提供」を変えること

です。

ツール導入がゴールになっている会社では、現場はこう思っています。

  • 「また新しいツールか」
  • 「結局、やることは同じ」
  • 「余計に手間が増えただけ」

この時点で、DXは失敗しています。


現場に丸投げしている

DXが進まない会社の多くは、こう言います。

「現場がDXに前向きじゃない」

しかし、これは責任転嫁です。

DXは現場主導では進みません。理由はシンプルです。

  • 現場は「今の業務を回す」ことで精一杯
  • 業務を変える権限を持っていない
  • 失敗のリスクを取りたくない

本来、DXは経営が「変える」と決め、現場を守りながら進めるものです。

「いい方法があったら提案して」この言葉が出ている会社は、ほぼ確実にDXが止まります。


目的が曖昧なまま進めている

DXが進まない会社に共通する質問があります。

「DXの目的は何ですか?」

この問いに対し、明確に即答できる経営・管理職は、驚くほど少ない。

  • 業務効率化
  • 生産性向上
  • データ活用

どれも間違いではありませんが、抽象的すぎます。

本来は、

  • どの業務を
  • どれくらい
  • どう変えるのか

まで落とし込まれていなければなりません。

目的が曖昧なDXは、優先順位がつかず、評価もできず、途中で止まります。


全員に同じDXを求めている

DXが進まない会社ほど、こう考えがちです。

「全社員がITに強くならなければいけない」

これは現実的ではありません。

DXに必要なのは、

  • すべての社員がエンジニアになることではなく
  • 役割ごとに必要なITリテラシーを持つこと

です。

例えば、

  • 経営層:意思決定に使えるデータの理解
  • 管理職:業務構造とシステムの関係理解
  • 現場:日常業務を回すための操作理解

これを区別せずに進めると、「誰のためのDXかわからない」状態になります。


小さく始められない

DXが止まる会社は、最初から完璧を目指します。

  • 全社一斉導入
  • すべての業務を一度に変える
  • 失敗しない前提で計画を立てる

結果、動けなくなります。

DXは実験です。失敗前提で、小さく試すものです。

  • 1部署
  • 1業務
  • 1指標

ここから始めない会社は、永遠に「検討中」から抜け出せません。


評価制度がDXと連動していない

DXを進めたいと言いながら、

  • 新しい取り組みは評価されない
  • 失敗すると減点される
  • 従来のやり方の方が楽

この環境では、誰も挑戦しません。

DXは、
評価制度とセットで設計しなければ進みません。

  • 試したこと自体を評価する
  • 改善提案を評価する
  • 成果が出るまでのプロセスを評価する

ここを変えずにDXを叫ぶのは、矛盾しています。


DXが進む会社は、何が違うのか

DXが進む会社には、明確な共通点があります。

  • 経営が「変える」と決めている
  • 目的が数値で定義されている
  • 現場を守りながら進めている
  • 小さく試し、早く修正している
  • 評価制度が行動と連動している

つまり、DXはITプロジェクトではなく、経営プロジェクトなのです。


DXが進まないのは、正常である

最後に、あえて言います。

DXが簡単に進む会社の方が、むしろ少数派です。

DXは、これまでのやり方・評価・権限構造を壊す行為です。
抵抗が起きない方がおかしい。

重要なのは、

  • 技術のせいにしない
  • 現場のせいにしない
  • 「やり方」を疑う

ことです。

もし社内DXが進んでいないと感じているなら、それは失敗ではなく、スタート地点に立った証拠かもしれません。