THINK
…THINK
これは、IBMをコンピューター業界の巨人へと成長させたトーマス・J・ワトソンの言葉です。IBMがアメリカで最初に商標登録を行った言葉でもあります。
これは、IBMの社内用便箋、マッチ、メモ帳などあらゆるところに「THINK」と印刷されていたそうです。
1940年の伝記記事では「この単語はIBMの全ての建物の全ての部屋の壁に目立つように貼ってある。各従業員はTHINKと書かれたノートを所持しており、何かひらめくとそこに記録する。社用便箋、マッチ、メモ帳などあらゆるところに “THINK” と印刷されている。Think という月刊誌が従業員に配布されている」と記している。
今はLenovoに事業を売却してしまったのですが、IBMのノートパソコンThinkPadもこの「THINK」から来たと言われています。
さすが、アメリカのコンピューター会社の社長の言葉。やっぱりスマートでかっこいい!と思いますが、実はこの人「世界一偉大なセールスマン」と評価されていました。
IBMは3つのコンピューター会社が合併して誕生しましたが、トーマス・ワトソンはこの内のNRC(ナショナル・キャッシュレジスター・カンパニー)の社長をしていました。
社長になる前は、営業・広告本部長で、この有名なTHINK(考えろ)はその時のモットーに由来するそうです。
「開闢以来、考えることはあらゆる前進を生み出す源だった。『考えていませんでした』というのでは、世界に何百万ドルもの損失を与えてしまうことになる。」
このモットーが、未だにIBMには息づいているのです。
今、話題の人工知能ワトソンも元々はこのトーマス・J・ワトソンが由来となっています。
IBMを語る時、トーマス・J・ワトソン抜きには語れません。そして、THINKこそが巨人と言われたIBM全盛期を作り上げた原動力となっていったのです。
実は、このTHINKにまつわる話はこれだけではありません。
1997年にアップル・コンピュータの広告キャンペーンのスローガンに「Think different」が使われました。
このスローガンは、TVCMの他に印刷物やアップル製品の全ての広告に起用されました。
もうおわかりかと思いますが、「Thinkとは違う」=「IBMとは違う」事をPRしていたのです。
その当時、IBMのPC/AT互換機+WindowsOSという組み合わせが、パソコン市場を席巻していました。Windows95が爆発的に売れ、その後のWindows98、Windows2000、WindowsXPとWindowsが搭載されるパソコンが世界中で売れまくっていた時代です。
今でこそ、iPhoneやiPadなど革新的なデバイスをどこよりも先に出しているAppleですが、その当時は、パソコン業界でのシェアは印刷業界・デザイン業界以外では一部の好き者が使うというイメージでした。
なぜ、そんなことになってしまっていたのか?
理由は、スティーブ・ジョブズがAppleにいなかったからです。
そして、1997年というのは、スティーブ・ジョブズがAppleに復帰した時期でもありました。
この「Think different」は復帰間もない非常に困難な状況だったアップル社内において、社内向けに考えられた哲学をキャンペーンに反映させたものだったそうです。
ドキュメンタリー番組『One More Thing』のインタビュー(Wikipediaより)
THINKもThink differentも、共通するのは、社内向けのスローガンが、対外的な広告やキャンペーン、コーポレートメッセージとして使われた点にあります。
対外的にコーポレートメッセージを考えるよりも、実は、社内的なメッセージをしっかりと作りこむもしくは、その哲学を浸透させることのほうが先なのかもしれません。
そんなことを考えてみました。
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