シニフィエとシニフィアン
言葉を構造的に分析する際に、このシニフィアンとシニフィエという概念は、とても便利です。
「シニフィアン」は
フランス語の動詞signifier
「意味する」の現在分詞で「意味しているもの」「表しているもの」を指しています。
一方、「シニフィエ」は同じ動詞の過去分詞で「意味されているもの」「表されているもの」を指しています。
日本語ではシニフィアンを「記号表現」「能記」、シニフィエを「記号内容」「所記」などと訳すこともあります。
これだけだとわかりにくいので、表を使ってみていきます。
日本語 | フランス語 | 英語 | 例 |
シニフィエ
(記号内容、所記) |
signifie | signified | 海のイメージや、海という概念、ないしその意味内容 |
シニフィアン
(記号表現、能記) |
signifiant | signifier | 「海」という文字や、「うみ」という音声 |
シニフィアンとは、語のもつ感覚的側面のことで、例えば海という言葉の「海」という文字や「うみ」という音声のことを言いいます。
も一方のシニフィエとは、このシニフィアンによって意味されたり表される海のイメージや海という概念ないし意味内容のことです。
また、表裏一体となったシニフィアンとシニフィエとの対のことを、「シーニュ」
(signe)すなわち「記号」と呼びます。
- その関係に必然性はない。(記号の恣意性)
- 例で言えば、「海」そのものを「海」と書き、「う・み」と発音する必然性はどこにもない。もしそれがあったとしたら、
あらゆる言語で海は「う・み」と発音されているはずである。
- 必然性がないにもかかわらず、それが了解される体系のなかでは必然化されている。
- 日本語を解する人が「海」という字を見、「う・み」という音を聞くとき、そこでイメージされるものの根底は基本的に同じである。
また、「海」はどうして「う・み」というのか、という質問に答えることは非常に難しい。
たとえば、リンゴは、そのもの自体、どんな言語だろうと同じものをイメージします。英語ではAppleですが、イメージするのは、
万国共通で品種に若干の違いがあれど、バラ科リンゴ属に属する樹木、
またはその果実を連想するでしょう。
哲学的には、シニフィアンは「誰もが共有できる事実」を、シニフィエは「個人的なイメージ」のことを表します。
この写真を見たとき、これがリンゴであるという真実は、シニフェアンになります。
逆に、Appleという言葉を聞いた時には、
こういうものや、
こんなもの、もしくは、
とか、極端な場合、
といったものをイメージするかもしれません。
実は、これらすべてシニフィエになります。
言葉を端的にとらえると、こうしたことが起こります。
では、普段会話の中ではちゃんとコミュニケーションがとれているのは、なぜなのでしょうか?
それは、言葉と言葉との関係性や関連性をお互いに認識しているからです。
「新しいパソコンほしいんだよね。」
「じゃ、Appleがいいよ。Windowsも使えるようになったし。」
ここで出てきたAppleは、決して
これを指していないことが、わかります。
ややもすると、言葉遊びで終わってしまいそうな話ですが、この話を踏まえて言葉が持つイメージを次回考えてみます。
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