組織力=中間管理
- 2008.07.31
- 考察
企業の抱える問題として永遠の課題と言っても過言ではないものが人の問題です。特に組織というものについては、大小問わず常に何らかの問題をはらんでいるのが常です。
それを裏付けるかのように、社員を対象としたセミナーは新人研修か幹部研修です。新人研修は新卒者や新社会人を対象としているわけで、右も左もわからない人たちにマナーや常識を教えるわけですから必要性もわかりますが、幹部研修はなぜそこまで必要とされているのかわからない人もいるのではないでしょうか。
幹部研修の対象者は企業の管理職に当たっている人たちです。経営幹部であろうが一般管理職であろうが、社長以外は全員中間管理職なわけです。
管理する側と管理される側と言うとあまりいい印象はないですが、組織においては大きく分けてこの二つに分類されます。
新人研修では、右も左もわからない素人が教えてもらう研修だと先に述べましたが、管理についても全く同じことが言えます。
それまでプレーヤーとして一線で働いてきた人が、突然、マネージャーになるわけです。マネージャーの仕事は、自分がプレーすることではなく、プレーヤーにプレーさせることなのです。自分は一切手を出さずに仕事を遂行することがマネージャーに求められていることなのです。
私も中間管理という立場に初めて立った時は、正直戸惑いました。それまで自分でしていたことを人にやらせなければならないのです。上からは自分ではいっさいするなという指示がありましたが、それでもはじめのうちは自分でしていました。しかし、それが見つかると、逆に怒られるのです。
まったく理不尽な話だと初めのころは思ったものですが、今となっては、マネジメントの基本を教えてくれていたのだと感じます。
プレーヤーとマネージャーの仕事は全く違うものです。
だから、誰もが初めての仕事になるわけで幹部研修が必要になるわけです。ただし、プレーヤーで高い実績をあげた人が最良のマネージャーになれるかというと、決してそうではありません。
それは、プロ野球やプロサッカーなどのスポーツの世界を見ればよくわかります。ずば抜けて高い成果を出したヒトが必ずしも名監督と呼ばれるかというと決してそうではありません。そこそこの結果を出していた人が以外と名監督と呼ばれるようになるのです。
プレーヤーとして結果を出すために必要なのは、結果にこだわり続けることです。目標を達成するための意欲(モチベーション)があれば、求める結果は得られます。
しかし、マネージャーは、プレーヤーに最良の結果を出してもらうために、裏方に徹しなければなりません。自分が表舞台に立とうとしてはいけないのです。マネージャーに要求されるものは、責任と人徳です。
一番まずいのは、プレイングマネージャーというあいまいな立ち位置です。プレーヤーとして常に結果を要求され続け、マネージャーとして管理も要求される。もちろんその二つをうまくこなせれば、一番いいのですが、たいていの人は一つのことしかできません。3つも4つも一度にはできないんです。
余談ですが、部下に指示を出すときどうやって指示を出していますか?3つも4つも出してはいませんか?そして、結局ひとつもできなかったということはありませんか?
そして、そのことに対して、「なんでできないんだ!」と憤りを感じることはないでしょうか。
私は、ありました。そして今もそんなときがあることに気付いています。
誰が一番悪いのかというと、それは指示を出したヒトが一番悪いのです。できない指示を出しているわけですから、かぐや姫と一緒です。
いい指示の出し方は、一つずつ出していくというやり方です。ただし、仕事も詰まっていますから、一つの仕事に与える時間は限られなければなりません。一つの指示に対していつまでできるかを必ず確認し、その一つが終わったら次の仕事、次の仕事と与えていくのです。このやり方は、ある本に書いてありました。
プレイングマネージャーとは2つのことを一緒にやれと言っているようなものです。部下の指示の出し方には不適切だということがお分かりいただけるでしょうか。
しかも、プレーヤーとマネージャーの業務は全く違うわけですから、かなりの負担(ストレス)がその人にかかることは必至です。
中小、零細企業においてはそんな悠長なことは言っていられないというのが、そうした企業の言い分でしょうが、それは、マネジメントの仕組みを作っていない社単なる言い訳にすぎないのです。
成長する企業は、まず仕組みから作っていきます。その仕組みにしっかりコミットできる人だけを採用していくことで、企業としての成長が達成できるのです。成長しない企業は、その仕組みが不完全なため、いつまでたっても同じところを行ったり来たりしているわけです。
しかも、そうした会社に限って、「いい人がいたら採用したい」というのです。誰だっていい人がいたら採用したいに決まっています。そのいい人の定義が全くないのに、いい人がいたらというのは、屏風の虎を捕まえてみろというのと一緒です。
これは、人材業をしていたときにいやというほど聞かされたセリフです。
会社にしっかりとした人材管理機構がないため、採用基準もあいまいになり、勘に頼って採用しては失敗を繰り返していくわけです。
「人を育てるのではなく、育つ人を採用する」という採用コンサル会社がありますが、人が育つには、環境こそが重要です。植物も動物も環境によって育ち方が違います。たとえば、魚沼産のコシヒカリとそれ以外のコシヒカリの違いは一体何でしょうか?
それは環境です。
では、その環境はどうすればよくなるのでしょうか。
環境を改善するには、常に見ていることです。トヨタのカイゼンも基本は観察です。それこそ24時間365日観察していれば、どこが問題なのかすべて見えてくると思います。本当はそれを社長が一人ですべきなのですが、まず不可能です。しかし、それが可能になるのは、中間管理というマネジメントシステムがしっかり機能したときです。