DeepSeekの値上げで優位性が消えました|GPT-5.6 Lunaへ移行した理由
DeepSeekは、性能に対して料金が極端に安いことが最大の魅力でした。多少の品質差があっても、コストで選ぶ理由がはっきりしていました。
しかし、2026年8月のAPI料金改定で、その前提が崩れました。DeepSeek V4
Flashは値上げされ、ピーク時間帯には入力$0.44、出力$1.32になります。一方、実務バッテリーでDeepSeek
V4 Flashを上回ったGPT-5.6 Lunaは、入力$0.20、出力$1.20です。
より高性能なモデルが、値上げ後のDeepSeekより安くなりました。これなら、メイン対話でDeepSeekを使い続ける理由はありません。
この記事では、Hermes
Agentの実際の利用ログ、API料金、12タスクの性能評価をもとに、DeepSeekからGPT-5.6
Lunaへ移行した判断をまとめます。Qwen Token
Planのクォータ切れによってDeepSeekへフォールバックしていた経緯も、補足として説明します。
結論:DeepSeekはメインモデルから外しました
今回の結論は明確です。
DeepSeekはオフピークのcron処理には残しますが、メイン対話のモデルからは外しました。値上げ後のDeepSeekには、品質と価格の両方でGPT-5.6
Lunaを選ぶ理由があります。
判断の根拠は3つです。
- GPT-5.6 Lunaは同じ12タスクの実務バッテリーで100点相当でした
- DeepSeek V4 Flashは87.5点でした
- DeepSeekの新ピーク料金は、Lunaの入力料金より高く、出力料金もLunaを上回ります
モデル選びで重要なのは、過去の「最安」という印象ではありません。値上げ後の料金と、現在の実測性能を同じ表に置いて判断することです。
今回の構成は、最初は次のようになっていました。
model:
default: qwen3.7-plus
provider: custom:qwen-token-plan
fallback_providers:
- model: deepseek-v4-flash
provider: custom:deepseek
この設定だけを見ると、メインモデルはQwenです。しかし、Qwen Token
Planの7日間クォータを使い切ったあと、APIは429エラーを返しました。Hermes
Agentは設定されたフォールバック先へ切り替え、その後の対話ではDeepSeek V4
Flashが応答していました。
Qwenが動いていなかったのではありません。Qwenが動いていた期間と、DeepSeekへ切り替わった期間があったというのが正確な説明です。
DeepSeekの値上げでコスト優位性が消えました
2026年8月、DeepSeekはV4 FlashとV4
ProのAPI料金改定を発表しました。新料金は2026年8月16日16時(UTC)、日本時間では8月17日午前1時から適用されます。
これまでDeepSeekを選んでいた最大の理由は、性能と料金のバランスではなく、多少性能が落ちても圧倒的に安いことでした。今回の改定は、その選定理由を直接壊します。
料金は一律ではなく、ピーク時間とオフピーク時間に分かれます。
| モデル | 現行入力 | 現行出力 | 新・オフピーク | 新・ピーク |
|---|---|---|---|---|
| DeepSeek V4 Flash | $0.14 | $0.28 | $0.22 / $0.66 | $0.44 / $1.32 |
| DeepSeek V4 Pro | $0.435 | $0.87 | $0.66 / $1.98 | $1.32 / $3.96 |
表の「新・オフピーク」と「新・ピーク」は、入力/出力の料金です。キャッシュヒットの料金も改定され、V4
Flashではオフピークが$0.007、ピークが$0.014になります。
ピーク時間はUTCで01:00〜04:00、06:00〜10:00です。日本時間では、10:00〜13:00と15:00〜19:00がピーク時間にあたります。
手元の直近7日間の利用量を新料金で試算すると、DeepSeek利用分は次のようになります。
| 現行料金 | 新・オフピーク中心 | 新・ピーク中心 | |
|---|---|---|---|
| 月換算 | 約$17 | 約$36 | 約$72 |
DeepSeekが突然使えなくなるわけではありません。しかし、これまで「最安だから」という理由だけで選んでいたメイン対話については、状況が変わりました。ピーク時間帯のDeepSeekは、より高性能なGPT-5.6
Lunaより高くなります。
Qwen Token
Planは使い放題ではありません
次に、Qwen Token Planを確認しました。
Liteプランは月額$6の期間限定価格で、7日間の利用上限は2,500
Creditsです。5時間制限は期間限定で無制限になっていますが、7日間制限は残っています。
| プラン | 月額 | 7日間上限 |
|---|---|---|
| Lite | $6 | 2,500 Credits |
| Standard | $18 | 10,000 Credits |
| Pro | $68 | 40,000 Credits |
ここで重要なのは、Token Planが完全な使い放題ではないことです。
- 5時間制限は現在、期間限定で撤廃されています
- 7日間クォータは残っています
- 7日間の上限に達するとAPI呼び出しは停止します
- クォータは最初の呼び出しから7日後にリセットされます
- 未使用分は次の期間へ繰り越されません
実際にToken
PlanのAPIを直接呼び出すと、次の429エラーが返りました。
Your token-plan 1-week quota has been exhausted.
The quota will reset at 08-18 13:59:00 UTC.
日本時間では8月18日22時59分まで利用できない状態です。
コンソールの表示で「7 Days Usage
Limitが0」と表示されていても、消費量・残量・リセット時刻のどれを指しているのかを確認しないと、状態を誤認します。最終的には、APIを実際に呼び出してHTTPステータスとエラーメッセージを確認するのが確実です。
QwenがDeepSeekに変わった経緯
利用ログを時系列で確認すると、状況は次のようになっていました。
8月7日から8月12日まで
Qwen Token
Planのqwen3.7-plusが実際に動いていました。大きなWebUIセッションもQwenで処理されています。
8月12日夜
Liteプランの2,500 Creditsを使い切りました。この時点でToken
PlanのAPIはクォータ超過になりました。
8月13日以降
QwenのAPIが429を返すため、Hermes
Agentはフォールバック先のdeepseek-v4-flashへ切り替えました。
一方、wikiの自動保存などのcronジョブは、もともとdeepseek-v4-proを明示的に指定していました。こちらはQwenのクォータとは関係なく、最初からDeepSeekです。
つまり、実際の経路は次のように分かれていました。
| 経路 | 実際のモデル |
|---|---|
| Qwenクォータが残っていた期間の対話 | Qwen 3.7 Plus |
| Qwenクォータ切れ後の対話 | DeepSeek V4 Flash |
| wiki-auto-saveなどのcron | DeepSeek V4 Pro |
| Qwenの代替として後から設定した経路 | GPT-5.6 Luna |
この確認で、「QwenのつもりがDeepSeekだった」という認識は半分正しく、半分誤りだとわかりました。Qwenは確かに動いていました。ただし、クォータ切れ後の自動切り替えを見落としていました。
フォールバックは便利ですが、料金と性能を変えます
フォールバックは、API障害やクォータ超過でサービスが止まるのを防ぐ重要な仕組みです。
一方で、次の問題があります。
- モデル品質が変わる
- 応答速度が変わる
- 料金体系が変わる
- 対応するAPI機能が変わる
- ユーザーが切り替わりに気づかないことがある
特に危険なのは、設定上のモデル名と実際のモデル名が一致しなくなることです。
フォールバックは「動き続ける」という意味では成功しています。しかし、料金や品質まで含めて考えると、切り替わったことを通知する仕組みが必要です。
値上げ後のDeepSeekと代替モデルを同じテストで比較しました
DeepSeekを使い続ける理由があるか判断するため、これまで評価してきたモデルと新しい候補を比較しました。
同じ12タスクの実務バッテリーでは、次の結果でした。
| モデル | 総合スコア | 入力/出力料金 | 判定 |
|---|---|---|---|
| GPT-5.6 Luna | 100点 | $0.20 / $1.20 | メイン候補 |
| Qwen 3.7 Plus | 95.8点 | $0.32 / $1.28 | Token Planなら定額 |
| Qwen 3.7 Flash | 91.7点 | $0.165 / $0.99 | 条件付き候補 |
| DeepSeek V4 Flash | 87.5点 | 新OP $0.22 / $0.66 | オフピーク処理限定 |
| Kimi K3 | 75.0点 | $3.00 / $15.00 | コード特化・高価 |
| MiniMax M3 | 参考68.5点 | $0.30 / $1.20 | 性能差で不採用 |
GPT-5.6
Lunaは、計算、翻訳、要約、JSON生成、コード生成、コードレビュー、監視レポートなど12タスクを完走しました。JSON生成では実行日も正しく出力しました。
DeepSeek V4
Flashはコスト面で優れていますが、短文生成や推論トークンの消費によって、タスクによっては空応答や途中終了が起きました。総合性能ではGPT-5.6
Lunaが上回りました。
Kimi
K3も注目されているモデルですが、API料金は入力$3、出力$15です。性能は高いものの、DeepSeekの代替として「コスパ」を求める今回の条件には合いませんでした。
GPT-5.6
Lunaをメインに切り替えました
比較の結果、Hermes AgentのプライマリモデルをGPT-5.6
Lunaに変更しました。
現在の構成は次のとおりです。
model:
default: gpt-5.6-luna
provider: openai
fallback_providers:
- model: deepseek-v4-flash
provider: deepseek
- model: claude-haiku-4-5
provider: anthropic
GPT-5.6 Lunaをメインにした理由は3つあります。
1.
品質が実測で上回ったからです
同じ12タスクで、DeepSeek V4 Flashの87.5点に対し、GPT-5.6
Lunaは100点相当でした。モデルの評判ではなく、実際の用途に近いテストで比較しました。
2.
値上げ後のDeepSeekより安いからです
GPT-5.6 Lunaは入力$0.20、出力$1.20です。DeepSeek V4
Flashの新ピーク料金は入力$0.44、出力$1.32です。
オフピークのDeepSeekは入力$0.22、出力$0.66なので、単価だけならまだ安いです。しかし、Lunaは実測性能で上回っています。メイン対話のために時間帯を気にしながらDeepSeekを使うより、Lunaへ統一したほうが、品質・運用負荷・料金をまとめて管理できます。
3.
Qwenのクォータに依存しないからです
Qwen Token
Planは試用には向いていますが、Liteの7日間上限は今回の利用量では不足しました。クォータ超過時に別モデルへ切り替わる構成は便利ですが、主力モデルとしては状態を読みづらくなります。
cronはDeepSeekを残し、オフピークに寄せました
すべてをGPT-5.6 Lunaに変えたわけではありません。
wiki-auto-saveなどのcronは、処理時間と料金を管理しやすいようにDeepSeek
V4
Proを残しました。その代わり、DeepSeekのピーク時間を避けて実行するようにスケジュールを変更しました。
現在のwiki-auto-saveは次の時間です。
- 6:00
- 9:00
- 14:00
- 22:00
日本時間のピークである10:00〜13:00、15:00〜19:00を避けています。1時と19時の実行は必要なかったため削除しました。
ただし、ここにも注意点があります。Qwen Token
Planの個人向けプランは、公式規約上、バックグラウンドの定期処理や自動化API利用が禁止されています。cronをQwenへ移すのは、料金だけを見れば魅力的でも、アカウント停止リスクがあります。
サブスクリプションの安さだけでcronの移行先を決めてはいけません。利用規約まで含めて判断する必要があります。
今回の教訓です
今回の一連の見直しで、AIモデル選びについていくつかの教訓が得られました。
設定ファイルを見ただけでは不十分です
default: qwen3.7-plusと書いてあっても、APIクォータ超過時には別モデルが応答している可能性があります。セッションログ、プロバイダー名、実際のAPI応答を確認する必要があります。
「最安モデル」は時間帯と条件で変わります
DeepSeekは改定後もオフピークなら安価です。しかしピーク料金、キャッシュヒット率、推論トークン、バッチ割引を含めると、単純な入力単価だけでは比較できません。
サブスクは無制限ではありません
Qwen Token Plan Liteは月額$6ですが、7日間2,500
Creditsの上限があります。利用量が多い場合は、安いプランを選ぶことが必ずしも得ではありません。
コストと品質は同じテストで比較します
ベンチマークの数字だけでは、実際の対話やコードレビューで使えるか判断できません。計算、要約、JSON、コード、監視レポートなど、普段の作業に近いタスクを同じ条件で試す必要があります。
まとめ:DeepSeekの安さが消えたなら、メインモデルを見直します
今回の構成では、GPT-5.6
Lunaをメインモデルにし、DeepSeekをフォールバックとcronに残しました。
DeepSeekを完全に捨てたわけではありません。オフピークに固定できるcronの大量処理では、まだコストメリットが残っています。
ただし、メイン対話でDeepSeekを使い続ける理由はなくなりました。値上げ後のピーク料金はLunaより高く、オフピーク料金で運用するには時間帯の制約があります。そこまでして、実測性能で下回るDeepSeekをメインに残す必要はありません。
DeepSeekの優位性は「安さ」でした。その安さが失われたなら、より高性能で運用しやすいGPT-5.6
Lunaを選ぶのが自然です。
AIモデルを選ぶときは、料金表だけでなく次の順番で確認するのが安全です。
- 実際に使うタスクで性能を測ります
- 入力・出力・キャッシュ・推論トークンを確認します
- クォータと利用規約を確認します
- フォールバック先と切り替え条件を確認します
- 実際のログで、想定したモデルが動いているか確認します
モデル選びで本当に見るべきなのは、設定画面に表示された名前ではなく、実際にどのAPIへリクエストが流れ、いくら請求され、どの品質で返ってきたかです。





