160名が受講したAI基礎講座から見えた、地方企業のAI活用課題

# 160名が受講したAI基礎講座から見えた、地方企業のAI活用課題

生成AIの活用は、いよいよ一部のIT企業や専門職だけのものではなくなってきました。

ChatGPT、Copilot、Gemini、Claudeなどの生成AIツールは、文章作成、情報整理、資料作成、企画立案、画像生成、動画制作など、さまざまな業務に入り込み始めています。

しかし、地方企業の現場ではまだ大きな課題があります。

それは、AIに関心はあるが、実際の仕事でどう使えばよいかわからないということです。

昨年から、私はAI基礎講座の講師として、のべ16日間、約160名の方にAI活用についてお話ししてきました。受講者は、企業の担当者、事務職、営業職、広報担当者、制作関係者などさまざまです。

今回、AI基礎講座の受講者アンケートを整理する中で、地方企業におけるAI活用の現状と、これから必要になるAI人材育成の方向性が見えてきました。

AI基礎講座の目的

今回のAI基礎講座では、単にAIツールの使い方を紹介することを目的にはしていません。

もちろん、ChatGPTやCopilotなどの基本的な使い方は扱います。しかし、本当に重要なのは、ツールの操作方法そのものではありません。

重要なのは、AIを自分の仕事にどう置き換えるかです。

たとえば、AIは次のような業務に活用できます。

  • 文章作成
  • メール文作成
  • 議事録の整理
  • 情報収集
  • 企画案の作成
  • SNS投稿文の作成
  • 採用広報の原稿作成
  • 営業資料のたたき台作成
  • 画像生成
  • 動画制作の素材づくり

ただし、AIは魔法の道具ではありません。

「何を任せるのか」「どこまでAIに作らせるのか」「最終的に人がどう判断するのか」

この設計がなければ、AIは業務改善につながりません。

そのため、講座ではAIの基本知識だけでなく、実際に手を動かしながら、仕事で使えるイメージを持ってもらうことを重視しました。

受講者アンケートから見えた高い満足度

今回のアンケートでは、講座に対して非常に前向きな評価をいただきました。

研修内容については、多くの方が「良かった」「まあまあ良かった」と回答し、否定的な評価はほとんどありませんでした。

理解度についても、「よくわかった」「ほぼ理解できた」という回答が中心で、「理解できなかった」という回答はありませんでした。

講師の説明についても、「わかりやすい」という回答が大半を占めました。

これは、AIに対して初心者の方でも、適切な順番で学べば、十分に理解し、仕事で使える可能性を感じられるという結果だと考えています。

受講者の声

アンケートの自由記述では、次のような声がありました。

  • 「実際にAIを触りながらできたので、わかりやすく実務に落とし込むイメージができた」
  • 「初めてAIを利用して便利さが分かった」
  • 「AIを実際に活用して、さまざまなツールや応用方法を学ぶことができた」
  • 「AIに対して抵抗がなくなった」
  • 「自分の中になかった中途半端な知識がひとつの形になった」
  • 「AIを理解し、上手く使えると動画や画像を生成することができることを学べた」
  • 「今後会社でAIを取り込むということで、よい研修になった」
  • 「生成AIは難しいだけではなく、簡単ではないと思っていたが、2日間で成長できた」
  • 「AIを仕事で使ってよいのか心配だったが、積極的に活用できるきっかけになった」

これらの声から見えるのは、受講者の多くが、講座を通じてAIへの心理的ハードルを下げているということです。

AI研修で最初に必要なのは、高度なプロンプト技術ではありません。

まず必要なのは、AIは自分の仕事にも使えるものだと実感してもらうことです。

地方企業でAI活用が進まない理由

地方企業でAI活用が進まない理由は、単に情報不足だけではありません。

私は、主に次の3つが大きいと考えています。

1. 何に使えばよいかわからない

多くの人は、ChatGPTという名前を知っています。しかし、自分の仕事のどの部分に使えるのかまでは整理できていません。

AIは便利そうだが、具体的な使いどころがわからない。

この状態では、なかなか日常業務には定着しません。

2. 使ってよいのか不安がある

AIを使うことに対して、情報漏洩、著作権、正確性、社内ルールなどの不安を持つ人も多くいます。

この不安は当然です。

特に企業利用の場合、個人の興味だけで使うわけにはいきません。業務で使う以上、最低限のルールや判断基準が必要になります。

3. 個人利用で止まっている

AIに詳しい社員が一部にいても、会社全体の業務改善につながっていないケースもあります。

これは非常にもったいない状態です。

AI活用は、個人のスキルで終わらせるのではなく、社内で共有し、テンプレート化し、標準化していく必要があります。

AI研修で重要なのは「発表」と「共有」

今回の講座では、受講者がAIを使って作成した内容を発表する時間も重視しました。

これは非常に重要です。

AIの活用レベルは、受講者ごとに差があります。すでに使っている人もいれば、初めて触る人もいます。

そのため、講師が一方的に説明するだけでは、理解度の差が埋まりません。

他の受講者がどのようにAIを使ったのか。どんな指示を出したのか。どんな結果が出たのか。それをどう感じたのか。

こうした発表を聞くことで、受講者同士が学び合うことができます。

AI研修では、講師から学ぶだけでなく、他の受講者の試行錯誤を見ることが非常に効果的です。

AI活用能力は、プロンプト力だけではない

最近は、「プロンプトの書き方」が注目されています。

もちろん、AIに対する指示の出し方は重要です。しかし、AI活用能力はプロンプト力だけではありません。

私は、AI活用能力には次の5つの要素があると考えています。

1. 問題設定力

何をAIに相談するのか。どの業務にAIを使うのか。何を成果とするのか。

ここを設計する力です。

2. 構造化力

AIに渡す情報を整理する力です。条件、目的、前提、ターゲット、制約を整理できるかどうかで、AIの出力品質は大きく変わります。

3. 言語化力

AIに対して、わかりやすく指示を出す力です。曖昧な依頼ではなく、目的や形式を明確に伝える必要があります。

4. 試行力

一度の回答で終わらせず、修正し、比較し、改善する力です。AIは一発で完璧な答えを出すものではなく、対話しながら精度を上げていくものです。

5. 統合力

AIの出力をそのまま使うのではなく、自分の仕事に合わせて編集し、判断し、実務に組み込む力です。

この5つがそろって、初めてAIは業務成果につながります。

地方企業に必要なAI研修とは

地方企業に必要なAI研修は、単なるツール紹介ではありません。

「このAIがすごい」「この機能が便利」「このプロンプトを使えばよい」

それだけでは、実務には定着しません。

本当に必要なのは、次のような研修です。

  • 自社の業務に置き換えて考える研修
  • 初心者でも安心して触れる研修
  • 受講者同士が発表しながら学べる研修
  • AIのリスクとルールも学べる研修
  • 研修後に社内で使えるテンプレートが残る研修
  • 個人利用ではなく、組織活用につながる研修

AIは、導入しただけでは成果が出ません。

成果を出すには、現場の業務を理解し、どこにAIを組み込むかを設計する必要があります。

AI活用は「知識」から「実装」へ

これからの企業に求められるのは、AIを知っていることではありません。

AIを業務に実装できることです。

特に地方企業では、人手不足、採用難、情報発信不足、業務の属人化など、さまざまな課題があります。

AIは、これらの課題を一気に解決する万能薬ではありません。しかし、正しく使えば、業務の負担を減らし、人が本来やるべき仕事に集中するための大きな力になります。

たとえば、採用広報では、求人原稿、社員インタビュー、SNS投稿、会社紹介文の作成にAIを活用できます。

営業では、提案書のたたき台、顧客へのメール文、商談後の議事録整理に使えます。

広報では、ブログ記事、SNS投稿、プレスリリース、動画構成案の作成に使えます。

事務では、マニュアル作成、文章整理、報告書作成、FAQ作成に使えます。

重要なのは、AIを特別なものとして扱うのではなく、日常業務の中に組み込んでいくことです。

今後の取り組み

今回のAI基礎講座を通じて、地方企業におけるAI活用の可能性を強く感じました。

一方で、AI活用にはまだ大きな格差があります。

すでに業務で使い始めている人。興味はあるが、まだ使えていない人。使ってみたが、継続できていない人。会社としてどう導入すればよいか迷っている人。

この差は、今後さらに大きくなる可能性があります。

だからこそ、地方企業にとって必要なのは、単発のAI体験ではなく、継続的なAI人材育成です。

今後は、AI基礎講座に加えて、業務別のAI活用研修、AI活用診断、社内テンプレート作成、AI導入ルールづくり、AI内製化支援などにも取り組んでいきたいと考えています。

まとめ

AIは、これからの地方企業にとって避けて通れないテーマです。

しかし、AIを導入すること自体が目的ではありません。

大切なのは、AIを使って何を改善するのか。どの業務を効率化するのか。どの情報発信を強化するのか。どの人材育成につなげるのか。

そこを明確にすることです。

今回のAI基礎講座では、多くの受講者がAIへの不安を減らし、実務で使うイメージを持つことができました。

これは、地方企業のAI活用を進めるうえで非常に大きな一歩です。

AIを「知っている」段階から、AIを「使える」段階へ。そして、AIを「業務に実装する」段階へ。

地方企業の現場に合ったAI活用を、これからも実践的に支援していきたいと思います。


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