日本人は本当に働きすぎ?

日本人は本当に働きすぎ?

働き方改革関連法施行に伴い、年次有給休暇(以下「有給休暇」と表記)に関する労働基準法が一部改正されました。有給休暇の付与基準日(以下「基準日」と表記)に10日以上の有給休暇が与えられる労働者に対して、使用者が1年間に5日時季指定をして有給休暇を取得させることが義務化されました。

ただすら人手が足りない中小企業にとっては、まさに死活問題と言われています。

日本人は働きすぎという見解からこのような法案が成立しているのですが、本当に働きすぎなのでしょうか?

日本の有給休暇取得率は19カ国中最下位

毎年、世界最大級の総合旅行サイト・エクスペディアの日本語サイト、エクスペディア・ジャパンでは、有給休暇の国際比較調査を実施しています。

ここで発表されているデータを元に有給休暇の取得率が少ないという見解になっていますが、そもそも19カ国にはG20の中でもロシアと中国の名前がありません。中国の代わりに台湾と香港がありますが、中国という枠ではないのです。

年次有給休暇というものの認識ですが、僕は社内人になりたての頃、有給休暇について会社の人に聞いてみたことがあります。その時言われたのが、「結婚式や忌引、体調不良など不慮の休みが必要になる時があるでしょ?そんなときに使えるのが有給休暇。いわゆる保険のようなもの」でした。

その時はすごく納得して、成る程と思っていましたが、法律がわかると嘘になってしまうわけで。

日本の祝祭日は多い

そもそも、日本の祝日は19カ国とG20も含めても一番多いです。
祝祭日が17日あります。5月と9月には連休が入り、お盆休み、年末年始休みなどを含めると27日(お盆5日間+年末年始5日間として)となり、約1ヶ月は休んでいます。
ヨーロッパではロングバケーションと言って2週間の長期休暇をとるとかという話がありますが、年間で見るとそれより多いか同じくらいなのです。(祝祭日数世界1位!日本人は休みすぎ!? PRESIDENT Onlineより)

PRESIDENT Onlineのデータは非常にわかりやすいのですが、祝祭日と有給休暇数の合計で27日となっています。しかし、先程のお盆休みと年末年始休みを+10日間とした場合、37日となります。お盆休みと年末年始休みが多い会社は40日を超えます。バカンス大好きなフランス人やスペイン人よりも休んじゃっています。

いつ仕事するんだよ!

もう、いつ仕事するのか?そればかりを考えなければなりません。

また、日本人は休みが不足しているとは思っていません。

誰が、休みが不足していると言っているのでしょうか?

クロス集計分析をすると、フランス人の頭のおかしさが際立ちます。

有給休暇取得日数が最も高いにもかかわらず、それでもアメリカやイタリアよりも休みを足りてないと思っているのです。コイツら働く無いだろ。

GDPと合わせて分析すると・・・

ここで、GDP世界ランキングを合わせて見てみるといろいろと見えてきます。

世界の名目GDP(USドル)ランキング - 世界経済のネタ帳 より
世界の名目GDP(USドル)ランキング – 世界経済のネタ帳 より

有給取得率とランキングは凡そ反比例します。世界第2位の中国の有給取得率が無いのが残念ですが、中国の有給休暇の法律では、労働年数によって日数が決まります。

中国の労基法では他の会社に転職しても労働している期間でカウントされるため、働き始めてからの年数によって有給休暇取得日数が変わります。累計勤務年数1~10年で5日、10~20年で10日、20年以上で15日です。若いうちは働いて、年をとったら体にガタが来るので休みも必要ということなのでしょうか?

どちらにしてもこの法律であれば、有給休暇取得率は低いと思われます。しかも日本人よりも労働人口が多いわけですし、一番消化していないのではないでしょうか?

中国人力資源社会保障部の調査によると、中国の取得率は日本より悪い50%と言われており、特に中国民営中小企業ではまだまだ有給制度の認識が低いようです。スイスの大手金融機関UBSの調査レポート「Price and Earning 2015」でも主要71都市の有給休暇取得率は上海が7日で最下位、北京も10日の下位3位でした。

中国の祝日と有給休暇について(執筆者: 利墨(上海)商務信息咨詢有限公司 副総経理 有井次郎)

アメリカも有給休暇消化率は低いです。GDPのTOP3は身を粉にして働いている国なのです。

本当に働きすぎなのか?

これまでの分析の結果、労働環境及び生産性が高いと思われる国が2つあります。

一つはドイツ、そしてイギリスです。

休み不足と感じている割合からこの2国は抜けてしまっています。おそらく、グラフに入れることが出来ないくらい少なかったのでしょう。

また、有給休暇の取得率はドイツが100%、イギリスが96%と高く、そして、GDPは世界第4位と第5位です。

特にドイツは、第2次世界大戦で同じ敗戦国として東西に分断され1990年に再統一されました。しかし、再統一後深刻な不況となり20年ちかく苦しい時代がありました。このあたりはバブル崩壊後の日本の失われた20年と近い部分があります。

ちなみに、ドイツの祝日は9日間です。有給休暇と合わせると39日間となり、年間休日数では日本とさほど変わりません。

というか、日本人は働きすぎだって言っている人、本当にそうですか?

参考