一人当たりの自己資本額1億円。

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今日は、アーバンベネフィット株式会社の取締役会長・木村勝男氏の講演を聞いてきました。
内容は、BS経営についてのお話でしたが、これは、木村氏が長年の経験から培ったノウハウの結晶のようなもので、実体験をベースとしたかなり貴重なお話でした。

そもそもBSとは何ぞや?という話ですが、これは、Balance sheet(バランスシート)の略で、貸借対照表といいます。正式な略はB/Sなのですが、あえて木村氏はBS経営としています。

貸借対照表は損益計算書(PL)と並んで、会社の決算書のことです。貸借対照表は、企業のある一定時点における資産負債純資産の状態を表すために複式簿記と呼ばれる手法により損益計算書などと同時に作成され、その企業の株主債権者などに経営状態に関する情報を提供するためのものです。

なぜ、それがバランスシートと呼ばれるのかというと、左右の合計数字がイコールになり、常にバランスがとられている状態で表記されるため、そう呼ばれています。

貸借対照表の項目の詳しい項目については、Wikipediaにありますのでそちらをご覧ください。

木村氏は、バブル崩壊で230億の負債を抱え、そこから現在経常利益10億の企業を作り上げた経営者です。実際、お会いしてみて話を聞いて、凄味を感じました。そんな木村氏はすでに68歳。世代交代もすでに終えており、現在の社長で3人目です。

なぜ、バランスシートが重要なのか?それは、230億の負債を抱えた原因と正面から向き合った時初めて見えてきたといいます。
それまでは、損益計算書を重視し、どれくらい節税できるか?とか、どれくらい売上が上がったか?とか、従業員数はどれくらいか?支店の数は?営業車の台数は?などといった部分を追いかけていたそうです。高度成長期時代はそれがすべてだったわけですが、バブルの崩壊とともに、そうした価値観も一緒に崩壊してしまったわけです。
そして、多額の借金を背負った時、はじめのうちは、ほかに責任があると考えていたといいます。しかし、ある出会いをきっかけにして自分の責任だったということを認識し、「強くてよい会社」という新しい価値観のもと、現在のアーバンベネフィットを作り上げていったということでした。

ちなみに、従業員数は20名だそうです。そして、一人当たりの自己資本額は1億円。
この自己資本額というのは、会社が自由に使えるお金、いわゆる貯金です。

会社の貯金を増やしていくには、経常利益からの毎年の積立によってのみ行えます。出ていくお金からはいくら積み立て用としてもそれは無理な話。会社としての利益を出して初めて会社の貯金は増やしていけるわけです。

自己資本以外にも他人資本というものがありますが、これはいずれ返さなければならないお金なので、借金です。
無借金経営というものもありますが、木村氏は、借金にはいい借金と悪い借金があるとも言っていました。必ずしも借金をしないということが決していいわけではないと。
しかし、借金してビジネスをしていくのであれば、自己資本比率を最低20%にしておかなければならないということです。ですから、仮に20億の自己資本額だとすれば、必要であれば80億を調達して100億までだったらOKということです。
もちろん、それ以上の利益を出さなければならないわけですが・・・。

ここまでの話だけだと、へぇ~すごいなぁ~。で終わってしまいます。
ここからが、私なりの考えの話です。

木村氏の話を聞いたとたん、学生時代に愛読書だったロバート・キヨサキの「金持ち父さん、貧乏父さん」がすぐに頭に浮かびました。そして、これはキャッシュフロー経営のことを指しているのだとわかりました。言い方は違えど、考え方は一緒です。

資本を増やして、その資本をもとに新たに投資し、そして資本を増やし続ける仕組みを作ることが重要だということなのです。
入ってくるお金が資産ではなく、手元に残ったお金が資産なのです。ここが、キャッシュフローのポイントだと私は認識しています。どれだけの自由に使えるお金を手元に残せるのか?

そのためには、入ってくるお金よりも出ていくお金について注意しなければならないです。それは、投資なのか?消費なのか?
後で数倍になって戻ってくるものは投資で、刹那的な出費はすべて消費です。投資をしているとよく耳にするのが、ROAやROEといった指標です。投資家はこれをもとに投資効率を考えます。木村氏もこのROAやROEといった指標がBS経営では重要だと話をしていました。
ちなみに、アメリカ企業の多くはROEが10%以上というのは当たり前。しかし、日本においては、5%以下にとどまっているのが現状だといわれています。
実際投資するなら、ROEが10%以上ないと、リターンはないと考えたほうがいいです。
それは、決して株主だからというわけではなく、そこで働く従業員に対しても同じことなのです。「働けど、働けど、暮らしは一向に楽にはならず。」というのは、この比率が低いことも要因の一つだと考えたほうがいいです。

そうすると、木村氏の言っているBS経営がいかに重要なのか?ということがわかってくると思います。従業員一人当たりの自己資本額1億あれば、年収を一人当たり1000万円払っても10%なのですから、当然、従業員の給与は高くなります。
そうした会社には、優秀な人材が入ってきます。もちろん、はじめはお金という部分もあるでしょうが、そこに理念が加わると、より一層強い会社になると木村氏はまとめていました。