言葉が持つイメージ

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言葉には、シニフィエとシニフィアンが存在していることは前回説明しました。

それを踏まえた上で、次の言葉を考えてみます。

  1. 遊び
  2. プレジャー
  3. pleasure
  4. 娯楽
  5. あそび
  6. アソビ

同じものを指していますが、その言葉が持つイメージはそれぞれ違っていると思います。その違いは感覚的なものですが、
それを言葉で表現すれば、こんな風にとらえることができます。

  1. 遊び・・・普通、中性的、日本的
  2. プレジャー・・・かっこいい、男性的、つめたい、イメージしにくい
  3. pleasure・・・イメージしにくい、海外的、つめたい
  4. 娯楽・・・かたい、男性的、つめたい、享楽的
  5. あそび・・・かわいい、やわらかい、女性的、こどもっぽい、日本的、あったかい
  6. アソビ・・・変わっている、イメージしにくい、子供っぽい

これ以外にも、いろんなイメージが浮かんでくるかもしれませんし、(主観的なイメージのため)
ここに書いたイメージを持たないかもしれません。

しかし、その言葉が持つイメージですが、同じ意味だとしても、言葉が持つイメージは、だいぶ違います。

そうした形で、ことばそのものをイメージだけで見ていくことは、以外とキャッチコピーやネーミングなどの場面で効力を発揮します。

たとえば、新商品を販売するときに、どんなネーミングで売り出そうか?と考えるともいますが、
こうした言葉が持つイメージによって分析することによって、ターゲットに即したネーミングが可能になります。

たとえば、「明治おいしい牛乳」

このネーミングには、以下のようなストーリーがあります。

新商品となる牛乳のネーミングにあたり、アイデア段階から数百にのぼる案が出ていました。「明治おいしい牛乳」の「おいしい」は、 一般的にごく普通用語であり、
味の印象は人それぞれが感じるものであるため、ネーミングとしての適切性などが議論されました。しかし、
ナチュラルテイスト製法による味に対する自信を最もストレートに伝えるものであること、老若男女、誰にでも分かりやすいこと、
加えて、 「おいしい」とあれば、買う側が味を試してみたくなるであろうという期待、これらの考え方から「明治おいしい牛乳」に決定しました。

文字も重要な視覚的要素であるため、使用する書体も既成のものをそのまま使うのではなく、 商品のイメージや特徴をお客さまに早く、確実に伝えるためのデザインが必要です。パッケージ全体のデザインと並行して、 中身である牛乳のおいしさをイメージする書体、牛乳らしい書体が検討されました。
機能的でもなく、洗練されすぎない、味わいのあるおいしそうな書体に絞られ、毛筆による書き文字をもとに制作された、分かりやすく、読みやすい書体に決定しました。さらに商品名がもつ「まろやかさ」
という味覚的特徴を喚起させるために一旦全体に膨らみと丸みがつけられましたが、「後味すっきり感」も強調することが望ましいとされ、角の丸みをとり、シャープな印象を持たせました。

「明治おいしい牛乳」 というネーミングより

牛乳は、基本的に誰でも飲めるものですし、老若男女問わずに、みんなに飲んでもらいたい商品です。ということは、 ターゲットはかなり広いわけです。また、製品は、製法にこだわり自信があったため、それを一言で表現しなければなりません。 より多くの人にわかりやすく、おいしさを伝える必要があったのです。

一見するとあまりにもストレートなネーミングにも見えますが、分析してみると、非常に考え抜かれた素晴らしいネーミングであることがわかります。今でも、コンビニではよく見かける商品ですが、一般的にコンビニにおかれている商品は、たいていこのような形で、ネーミングが行われている場合が多いです。
(コンビニは、マーケティングの完成系ともいわれますが、その話はまた別の機会に…)

言葉には、普段考えている以上に受けて側に伝わるイメージというものがあります。

そのイメージと、そのものが持っているイメージがマッチしたとき、絶大な効果を発揮します。

実は、これは人の名前にもある程度当てはまります。
親は子供に対していろいろな想いを寄せて名前を付けるわけですが、 ある程度はその言葉通りの人に成長します。ただ、人間の場合、環境がもろに影響してくるため、そうでない人も中にはいますが。

言葉は、言霊を持っており、その力はとても強いと言われますが、それを科学的に分析することが言語学では可能なのです。

良い印象やイメージを持つ言葉と、悪い印象やイメージを持つ言葉も存在します。

たとえば、いい印象やイメージを持つ言葉としては、

  1. 新しい
  2. ありがとう
  3. うれしい
  4. 好き
  5. 生きる

などが挙げられます。反対に悪い印象やイメージを持つ言葉は、

  1. 古い
  2. 逝ってよし
  3. 悲しい
  4. 嫌い
  5. 死ぬ

このように、いい印象と悪い印象とがはっきりしている場合は、わかりやすいのですが、普段会話の中で、
それを意識して話している人はいないと思います。

言葉が持つイメージについては、ドイツ語やフランス語などは顕著で名詞に対して男性名詞、女性名詞、
中性名詞などと分けているものもあります。ただ、ドイツ語やフランス語が堪能な方なら、わかると思いますが、なぜそれが男性名詞なのか?
女性名詞になるのか?日本語に訳すとよくわからない言葉も多いです。

それは、日本語が持っているイメージとドイツ語やフランス語持っているイメージが異なっているから、そう感じるのであって、日本語では男性的だと思うような言葉でも、ほかの言葉では女性名詞だったりする場合があるのです。

これらのことを踏まえると、人からどう思われたいかによって、使う言葉をうまく選んでいくと、人間関係はスムーズにいくかもしれません。