カルチュラル・スタディーズ

カルチュラル・スタディーズ (Cultural studies) は、主にイギリスに始まり20世紀後半に盛んになった学問の傾向を意味している。サブカルチャーなどを手がかりに文化と政治に関わる状況を分析しようとするもの。バーミンガム大学現代文化研究センター(CCCS – Centre for Contemporary Cultural Studies)が主要な震源地となった。
日本語に直訳すれば「文化研究」だが、日本国内ではもっぱら「カルチュラル・スタディーズ」と表記される。通称カルスタ。ただしこれには若干軽蔑的なニュアンスを伴う。その理由は、文学・社会学・歴史学・文化人類学・メディア論・現代思想などといった多様な学問領域を「お手軽に」横断してしまうからである。
概要
ジャウディン・サルダーはその著書「INTRODUCING カルチュラル・スタディーズ」で以下のようにカルチュラル・スタディーズの主要な特徴を五つ挙げている。
- カルチュラル・スタディーズはその主題とする事象を文化的実践と権力との関係という見地から吟味する。
- その目的には文化をその複雑な形式すべてにおいて捉えること、そしてそれが自らを浮き立たせている文化的・社会的コンテキストを分析することが含まれる。
- それは学問分野であると同時に、政治的批判と行動の場でもある。
- それは知識分野のあいだの乖離を露呈させ調停することを試み、暗黙の「文化的知識」と、客観的で「普遍的」な形式の知識とのあいだの分離に打ち勝とうと試みる。
- それは近現代社会に対する倫理的評価と政治的行動の急進的な路線へのコミットメントを行う。
関連する理論家
- レイモンド・ウィリアムズ (Raymond Williams)
- リチャード・ホガート (Richard Hoggard)
- ポール・ギルロイ (Paul Gilroy)
- スチュアート・ホール (Stuart Hall)
- テオドール・アドルノ (Theodor Adorno)
- ミシェル・フーコー (Michel Foucault)
- ルイ・アルチュセール(Louis Althusser)
- ジャック・ラカン (Jacques Lacan)
- ジャック・デリダ (Jacques Derrida)
- ユルゲン・ハーバーマス (Jurgen Habermas)
- ジャン・ボードリヤール (Jean Baudrillard)
- ロラン・バルト (Roland Barthes)
- ヴァルター・ベンヤミン (Walter Benjamin)
- ピエール・ブルデュー (Pierre Bourdieu)
関連文献
- 上野俊哉・毛利嘉孝『カルチュラル・スタディーズ入門』、ちくま新書、2000年
- 上野俊哉・毛利嘉孝『実践カルチュラル・スタディーズ』、ちくま新書、2002年
- ターナー、グレアム『カルチュラル・スタディーズ入門-理論と英国での発展-』、作品社、1999年
- 本橋哲也『ポストコロニアリズム』、岩波新書、2005年
- 吉見俊哉『カルチュラル・スタディーズ』、岩波書店、2000年
ラベル: 社会学基本講義
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