企業か、生業か

インターネットをビジネスとする場合、どうやらこの問題にぶつかるような気がします。

企業としてネットビジネスを展開しているところは数多くありますが、成功しているモデルは、数えるほどしかありません。
しもかもどもモデルもB2BのサービスよりもB2Cのサービスのほうが圧倒的に多いです。

今さらと思う方もいるかもしれませんが、これが、ネットビジネスの根底に横たわっている大きな問題のような気もします。

B2Bのビジネスモデルも、よくよく見ると、B2B2Cという形で、最後にはCustomer(顧客)
をターゲットとしたビジネスモデルの構造になっています。

インターネットというメディア自体が、不特定多数を対象としたマスメディアである特性から、Customer(顧客)
を最終的にターゲットしたビジネスモデルしか残れないのかもしれません。

しかし、生業(いわゆる個人事業主)の場合は、B2Bのモデルでも十分対応可能です。もしくは、
少数精鋭の10名以下の組織などにもこのビジネスモデルは対応可能だと考えます。

特に顕著なのが、ホームページの製作現場においてです。ホームページの制作だけであれば、今や必要ない時代になってきました。特に、
低価格のCMSの台頭やブログをベースとしたコンテンツ管理などが主流となってきている現在、
それだけに価値を見出す人は少ないのではないでしょうか。

しかし、それでもまだ需要はあります。

2005年時点の中小企業庁の調べでは、全国に470万社ほど会社があるといわれています。しかし、
すべての会社がホームページを持っているかというと、決してそうではありません。まだまだ持っていないところのほうが多く、
これから作りたいと思っている企業は地方に行けばいくほど、多いです。

需要があっても、それを供給するだけのキャパシティーと多様な対応が取れないことも事実です。

ホームページの制作自体は、個人でも可能です。多少センスが良ければ、誰でも作れてしまうのが、ホームページですが、
企業サイトとなると、さまざまな人が関わり、いろいろな想いが交錯するため、一筋縄では行きません。

トップダウン方式で、社長がすべてを担当するのであれば、業者にとっては、話は早いかもしれませんが、
ホームページを一緒になって作っていられるほど、社長は暇ではありません。そうすると、
担当者が付けられますが、担当者は担当者なりに、会社に対する想いを持っています。

そんな人々の想いをまとめ、形にしていくわけですから、時間はそれなり掛かりますし、話をまとめている段階で頓挫することもあります。

そうすると、制作会社としては、足が長く採算の取れない事業として早期撤退を余儀なくされるわけです。

もしくは、新たなビジネスモデルの構築に移行していきます。

逆に、ホームページ制作を生業として、一人で頑張っている人もいます。たとえば、制作期間を3カ月とした場合、
単価が20万円だとしても、個人事業主はその仕事を受けるでしょう。しかし、企業で考えれば、それは決して妥当な数字とは言えません。
制作会社では、すべてを一人で制作することはないからです。必ず複数人が動いて制作を進めていきます。

まずは、話を持ってくる営業。要望をまとめるディレクター。デザインを起こすデザイナー。撮影をするカメラマン。
HTMLにデータを書き起こすコーダー。システムを入れる場合はプログラマーも必要となってきます。

こうして出来上がったサイトは、個人事業主が制作したサイトとは完成度が違います。なぜなら、
それだけを専門で行っているプロが各作業を担当し、制作しているわけですから。

ホームページ制作会社の中には、単価が50万円以下の仕事は一切受けないというスタンスを持っているところもあります。それは、
価格を落とし、質を落とすぐらいであれば、作らないほうがましというポリシーからです。
プロはプロとして仕事にプライドを持って仕事をしているわけです。

ただ、それができるのは、会社等環境があってこそ。

環境がなければ、そうした質の高い仕事はできません。しかも、質にこだわらないのであれば、生業のほうが儲かります。

また、良く言われる話ですが、個人でホームページの製作で生計を立てている人が、
企業化したとたんにうまくいかなくなるケースがあります。それまで、個人として採算は取れていたかも知れませんが、企業化することによって、
会社に入るお金というものも考えなければならなくなります。その辺を考慮しないと、うまくいかないわけです。

キノトロープという日本でもトップクラスのホームページ制作会社があります。この会社は、ずいぶん前から、
ホームページ制作だけではなく、戦略やブランディングまでを含めた提案をして成功している会社です。ホームページ制作に高い付加価値をつけ、
その付加価値によって、適正な価格で勝負する。
この発想がなければ、企業としての生き残りは難しいでしょう。

一人でも仕事はできてしまうだけに、
組織人として、会社の意向に沿った形で仕事をするのか、自分のポリシーを曲げずに個人で仕事をするのか。

それが問題です。