u-Japan

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2001年から5カ年計画で推進されたe-Japan戦略は、インフラなどの基盤整備から始まり、2005年までに世界最先端のIT国家という目標をおおよそ達成しました。

~引用~
わが国が、高度情報通信ネットワーク社会の重点的かつ迅速な形成の推進を目的として、「IT基本法」を制定してから、4 年が経過した。この間、2001 年の1 月からは、2005 年までに世界最先端のIT国家となることを目指す「e-Japan戦略」がスタートしたが、当初、出遅れが心配されたブロードバンド化は、インフラストラクチャーの整備が予想を上回る速さで進展し、実際の利用においても世界有数の利用帯域幅と価格水準を有するものとなり、まさに世界最先端というべき水準に達しようとしている。
(u-Japan政策 2004 年12 月 ユビキタスネット社会の実現に向けた政策懇談会 より)

また、2006年時点で、ブロードバンド利用者数は中国、アメリカにに次いで世界で第3位という結果を見れば、説得性が高いでしょう。

e-Japan戦略が終わりに近づいていた2004年時点において、我が国の急速なIT化に合わせる形で、2004年7月に当時の麻生太郎総務大臣の提案により首相官邸で主導するe-Japan戦略の後に続く戦略としてユビキタスネット社会実現に向けた政策として打ち出されたのが、u-Japan政策になります。同年12月には、有識者による政策懇談会がもうけられました。
2005年に総務省より発表された平成17年度版情報通信白書においては、u-Japanの胎動が既に特集テーマとして、発表されています。
その後の2006年に発表された平成18年度版情報通信白書では、より具体的に経済へ及ぼす影響として「ユビキタスエコノミー」についてまとめられています。

このu-Japan政策の中で語られているユビキタスという言葉については、既に多くの文献やメディアでもその内容を説明してあるので、詳しくはそれらをみてもらいたいですが、ユビキタスの意味だけを説明しますと、ラテン語で「いたるところ」とあります。
要するに、至る所でネットが利用できるというイメージが、ユビキタスネットワーク社会というものです。

この用語自体は、2001年頃から既に業界内では当たり前のように使われていました。
そんな訳で、あまり意識もせず、どちらかというとすっかり忘れてしまっていましたが、どうやらその潮流が、地方にもようやく波及してきたようなので、改めてクローズアップしてみた次第です。

特に、国策として打ち立てられてからは、その波及は非常に早まります。17年度版の情報通信白書でようやく始動という段階で、18年度に入って具体的な方向付けが見えてきたため、そろそろ全国的な動きになってくることが予測されます。

ちなみに、情報社会といわれるようになってきてはいますが、都市部(特に首都圏)と地方とでは、そこに大きな差があります。情報だけでいえば、5年ほど差があるのではないでしょうか。情報を伝えるメディアは数多くありますが、結局人からの情報が最も新鮮で信憑性が高い情報ですから、人口の少ない地方では、そもそもそれを知っている人自体少ないかもしくは、いない場合もあります。(この情報格差については次回)

昨年発表された平成18年度版情報通信白書の概要では、情報通信市場の動向やユビキタスネットワークの普及促進、ユビキタスネットワークによる新しい潮流などといった、現状をわかりやすく図を入れて説明してあります。この中で、特筆すべきポイントが1つだけありました。
それは、労働経済への影響についてです。

~引用~
○企業のICT化の進展により、雇用者に対する情報通信リテラシーの要求水準が高まるとともに、特に役職者を中心に「情報を活用する能力」が求められ、非定型的な労働需要(独創性や希少価値を生み出すスペシャリストに対する需要)が増大する傾向がある。〔図41〕

インターネットはそれ自体が目的ではなく、あくまでもツールです。しかし、それを使いこなすには、読み書き能力(リテラシー)が要求されます。これまでの我が国の基礎教育では、紙と鉛筆で行う一般的な読み書き(リテラシー)をしっかりと教えてくてたため、ほぼ100%に近い人が、一般生活を難なく行えます。こうした点においては、教育水準が高いといえる訳です。しかし、これと同じように情報通信には別系統のリテラシーが要求されます。
特に、文字を書く場合、紙と鉛筆ではなく、キーボードを利用します。箸の持ち方と同じで、我流でタイピングを行う人も多いようですが、キーボードは両手で使ったとき最も効率的に文章を作成できるように設計されているため、片手で打っている人は両手を使っている人ほどや早くは打てません。しかも、両手の指をすべて使わなければならないのです。

もちろん、こうした部分も重要ですが、それ以上に収集した情報を整理・分析する能力が必要だと、概要のグラフは物語っています。それは、一般社員よりも部長クラスの役職に就いている人には、かなり高く要求される訳です。

経営の効率化を考えたときに、膨大な情報を社長一人で整理・分析し、決断する作業はできません。よって、情報の整理・分析を部長以下の役職に委任し、決済だけをとるスタイルが最も速度的にあ早い訳です。とすると、部長以下の情報の整理・分析速度が遅ければ、その分だけ業務効率が悪化するともいえます。
これから最も問題になってくるのが40歳~50歳までの管理職です。今年から団塊の世代が大量に退職し始めますが、そうすると、今の50代は10年以内に会社を離れることになります。
しかし、40代においてはこれからの10年が最も厳しい状況下に置かれることになるでしょう。
今の20代~30代については、インターネットの利用者数をみても最も多い世代であるため、世代的には問題ないかもしれませんが、能力の個人差によって、激しい競争下に置かれることも予測されます。

u-Japan政策の推進の裏には、情報格差という社会問題の拡大が既に予測されています。

参考資料一覧

  1. 平成16年版 情報通信白書
  2. 平成17年版 情報通信白書
  3. 平成18年版 情報通信白書
  4. 総務省 u-Japan政策
  5. フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』