脱・売上至上主義

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営業の多くは、数値目標を持って行動しています。数値目標というと聞こえはいいですが、要するに会社から課せられたノルマです。
いろんな業種はありますが、この部分はどんな仕事だろうと共通して言えることでしょう。
しかし、この数値目標の捕らえ方には2通りあります。

  • 一つは、売上数値目標
  • もう一つは、粗利数値目標

売上は、営業が商品やサービスを売った金額です。
売上目標の場合、100万円のものを売ったとき、原価が80万かかったとしても原価などは一切考えず、売った分だけを計算して目標数値に近づけます。
一方の粗利は、売上金額から原価を差し引いた金額です。
たとえば、100万円のものを売ったとしても、原価が80万かかっていたらその差額の20万円で計算して目標数値に近づけなければなりません。
同じ100万という数字でも、売上目標を達成するには100万円のものを1個売れば達成できますが、粗利目標の場合、5個売ってようやく達成できるわけです。
営業の場合、「数字=評価」とされるので非常に評価はしやすく、数字上がらなければ数字は下がりますし、数字が上がっていれば出世も早いわけです。
別にその人の人間性がいいとか悪いとかは、評価の基準に値しません。人間性が良くても数字が上がっていなければ、評価は低いですし逆に、人間性以前問題というような人でも、数字さえ上がっていれば、どんどん出世していくというのが営業という仕事です。

ここら辺の話は、社会人一年生レベルです。
本題は、ここから。

売上と粗利なぜ2つの数値目標が存在するのか?

業種によっても理由はさまざまでしょうが、原価のはっきりしている業種は売上ベースで計算し、原価のはっきりしない業種は粗利で計算するのが一般的のようです。
原価のはっきりする業種というのは主に第2次産業と物販などです。原価のはっきりしない業種というのは第3次産業、主にサービス業です。

最近、労働時間が異常に長く、健康を著しく阻害されていることが問題になっていたりします。この問題には、実は粗利目標との関連性が非常に高いのではないかと考えています。

先ほどの話に戻しますが、同じ数値だとしても、売上目標では1個売れば達成できても、粗利目標では5個売らなければなりません。この時点で仕事は5倍に膨らむわけです。便宜上、仕事としましたが、簡単に言えば手間です。この手間が増えると必然的に仕事は増える訳です。

こうした状況を生み出した背景の一つには、情報化があると考えています。情報化が進むにつれて仕事のスピードと量は著しく増加しました。しかし、それは仕事を減らした訳ではなく、空いた時間にまた別の仕事をすることによって、労働時間は著しく凝縮されていくのです。
また、先ほどの例で考えると5個売る時間と1個売る時間とが同じであれば、生産性は同じになります。しかし、売上は5倍になるのでかなりがんばったと思ってしまいます。営業のモチベーションを向上させるという意味では良いかもしれませんが、それ以外ではあまり意味をなしません。逆に、売上数値だけでの評価を期待するようになるでしょう。がんばっているという気持ちが評価につながらないとなると、途端にモチベーションは下がります。
給与で還元したいのもやまやまですが、実質的な粗利がないのでは、お金を出すことはなかなか難しいです。(借り入れによってカバーするという方法もありますがこれを続けていけばいずれ債務超過を引きおこいます)

数年前からモノに対する評価よりも、サービスに対する評価を顧客は期待するようになっています。理由は、既にモノは十分すぎるほど身の回りにそろっているからです。顧客が期待するものは、付加価値なのです。大手量販店では、ポイントカードという付加価値によって他店との差別化を図っています。某最高級車販売店では、営業はすべてアルマーニのスーツを支給されるそうです。付加価値に対する対価を払うという風潮がここ数年で一挙に広がってきました。原価のかからない付加価値はサービスであり、粗利です。モノを扱う業者でもこうした戦略によって、勝ち残っていくのです。
こうした戦略は売上をベースに考えると、出てこない発想です。なぜなら、価格の決まったモノを何個売ったかだけで、十分なのでそこまで考える必要がないからです。逆に、粗利をベースに考えると、原価の上にどれだけ粗利を乗せられるか?という発想を生み出します。
原価80万円の商品であれば、180万円で売れば、粗利は100万円なのです。では、100万円分の付加価値をどのようにつけるか?そうした発想によって、サービスの善し悪しが生まれ、差別化につながり、多少高くても、顧客は満足してそれを購入するという流れを生み出します。

顧客が求めているのは、モノに対する価値ではなく、コトに対する価値だということを認識できれば、売上至上主義でいることはできなくなるはずです。