ジェネレーションY 2002/6/5 抜粋記事

NO IMAGE

JaM Japan Marketing LLC代表大柴ひさみ

クリックするために生まれてきた子供たち-「Generation Y(ジェネレーションY)」

アメリカ人の特定世代をさす言葉で、日本でも頻繁に使われる言葉に「ベビーブーマー」があります。このベビーブーマーたちは、今60代に入りかけ、アメリカ史上最も豊かなRetirements(現役を引退した世代)として、アメリカ市場の新たな金鉱「シニアマーケット:高額商品購入の消費パワーをもつ」を牽引しています。この世代と対照的な世代として、今注目を浴びているのが「ジェネレーションY」とよばれる世代です。以下の表は社会学者のJonathan Pontell(ジョナサン・ポンテル)による世代の区分けですが、この定義に関してはさまざまな見解があり、正確に年代を区分して世代を何々とは定義できません。ただ世代の特徴としては、「クリックするために生まれてきた子供たち」とよばれ、コンピュータ化の進んだなかで子供の時からデジタル化された生活をして、他の世代とはかなり違う思考と行動様式をもち、E-Tailorたちから今もっとも狙らわれている世代が、ジェネレーションYです。 ジェネレーションYとは?

  • 1977-1990の間に生まれた10歳から24歳までの世代、約5,800万人の人口を抱える。年間2,500億ドル以上の可処分所得を消費するといわれている。
  • 1981年以降に生まれた世代で6,000万の人口を抱え、そのうちの約半分3,100万人はティーンエージャ-として2000年に1,410億ドルを消費した。

Jonathan Pontellによるアメリカの世代区分

年代

世代名

この世代を象徴するTV番組

特徴

1941年以前

Mature Generation(成熟世代)

The Honeymooners

第二次世界大戦以前に生まれ育った世代

1942-1953

Baby Boomers(ベビーブーマー)

American Bandstand

第二次世界大戦中およびその後に生まれたブーム世代。現在の金鉱「シニアマーケット」を支える。

1954-1965

Generation Jones(ジョーンズ世代)

The Brady Bunch

ベビーブーマーの中に入れる見方もあるが、この世代にブーマーへの帰属意識はない。

1966-1982

Generation X(ジェネレーションX)

The Real World

ブーマーの子供たちでアイデンティテイのない世代といわれている。

1983-2001

Generation Y(ジェネレーションY)

Popular

ジョーンズ世代とX世代の子供たちで、クリックするために生まれてきたとよばれ、子供時代からコンピュータに親しんでいる。

Y世代が熱くなるX GamesとGravity Games(Extreme Sports)

この次世代の大いなる消費者「ジェネレーションY」が、今もっとも熱くなっているスポーツが、スケートボード、インライン・スケート、フリースタイル・バイク等を総称する「Extreme Sports(エクストリーム・スポーツ)」です。スポーツ専門のケーブルTV局ESPNが、1995年から「X Games(http://www.xgames.com/)」と名づけて次世代のスポーツイベントとしてプロモーションしており、年2回、夏と冬に実施されるこのイベントは、伝統的なスポーツとはまったく異なるカタチで急速に浸透しています。

今年8月11日から22日まで、フィラデルフィアで開催された今年の「X Games」は、3大ネットワークのひとつABCとESPN、ESPN2によって全米2,500万世帯をカバーし、30万人が実際にイベントに参加し、20時間半放映されました。これは5歳から15歳のY世代にとって、ベースボールのMBA、バスケットボールのNBA、フットボールのNFLを超えた今もっとも注目すべきスポーツイベントです。彼らのヒーローは、タイガー・ウッズやマイケル・ジョーダンではなく、スケートボーダーのTony Hawk(トニー・ホーク)です(子供向けケーブルTV局で実施されたNickelodeon Kid’s Choiceでは、ホークは男性アスリートのNo1に選ばれており、ウッズやジョーダンは候補者にもあがっていません)。2年前の調査によると、1999年のベースボールのプレー人口は100万人で、その2.7倍の270万人が実際にインライン・スケーティングを楽しんだという数字がでてきており、この差が2001年現在ではかなり開いているように思われます(Source: Sporting Good Manufactures Association)。

ABC系列のESPNに対抗するように、もうひとつの3大ネットワークのNBCは「Gravity Games」と称してやはりエクストリーム・スポーツを積極的にプロモートしています。NBCは、オリンピックの放映権を2008年までもっており、前回のシドニーオリンピックで史上最低の視聴率となったこともあり、冬のオリンピックが開催されるソルトレイクで、その人気挽回のためにスノー・ボーディングをテコにして、このY世代の注目を集めようと、現在さまざまなキャンペーンを計画中です。

このスケートボード、インライン・スケート、フリースタイルのオートバイや自転車という次世代のスポーツを表現する際に、盛んに「Air(空中)」という言葉が使われます。これは、これらの特徴を表現するキーワードで、”いかに「Gravity(重力)」を跳ね返して、空高く「Air(空中)」にとどまり、「Extreme(過激な)」技術を見せるか”が、これらのスポーツの醍醐味です。またこの「ボーディング」というスポーツは、冬場の「スノー・ボーディング」、海上で行われる「カイト・ボーディング(たこを使って海上でボーディングする)」や「ウエイク・ボーディング(水上スキーのスケート・ボーディング版)」というふうにどんどん拡大しており、以下の表にも示されているように今後注目すべきスポーツカテゴリーとなりつつあります。

10大人気エクストリーム・スポーツの競技人口(1999年の調査。6歳以上のアメリカ人を対象に以下のスポーツを1回以上競技したことのある人を対象に実施)

スポーツ名

競技人口

ヘビープレイヤー

Inline Skatingインライン・スケーティング

2,786万5,000人

908万7,000人(年間25日以上)

Mountain Bikingマウンテン・バイク

784万9,000人

199万8,000人(年間25日以上)

Skateboardingスケート・ボーディング

780万7,000人

148万人(年間52日以上)

Paintballペイントボール

636万4,000人

117万2,000人(年間15日以上)

Artificial Wall Climbing人口壁面のクライミング

481万7,000人

 

Snowboardingスノー・ボーディング

472万9,000人

65万3,000人(年間15日以上)

BMX BicyclingBMX自転車

373万人

105万2,000人(年間52日以上)

Wakeboardingウエイク・ボーディング

270万7,000人

56万8,000人(年間15日以上)

Mountain/Rock Climbingマウンテン・ロッククライミング

210万3,000人

 

Surfingサーフィン

173万6,000人

 

Source: Sporting Good Manufactures Association

http://www.asia-links.com/japanese/oshiba/report7.htm



情報社会においては、人間の神経系の容量を超える量が高速で飛び交う情報の洪水から自分を守るために、他人との接触を控え、自分だけの世界に引きこもる傾向が示されることがあります。この自己防衛反応については、「カプセル人間」や「おたく」などと呼ばれている若者のメディア依存として説明されることもありますが、重要なことは、強い親メディア性を備えている現代人は、メディアからの情報の洪水によって過剰に自己評価・自己点検を強いられ、その結果、傷つきたくないという強迫観念から、対面的な関わり合いを回避していると考えられることです。このような「引きこもり」の結果、無能感や矮小感が肥大化するおそれがあり、それが、弱者を標的にする児童虐待の遠因になっているのかもしれません。



そして「若者は相互に依存している」とか「若者はいつも誰とでも繋がっていたい」というように移動体メディアの特性と若者の臆病な心性とを結び付けて非難されるケースが多い。しかし、このような「若者は人間関係に対して臆病だ」といった批判は最近になって始まったものでもなく、携帯電話の普及以前にもあったのではないか。例えば中野は70年代以降の若者に特有の気質を「カプセル人間」と表現して以下のように説明している。

 「集まっているけれど、それぞれはバラバラで好きなことをやっている。肉体的というか、人格的というか、そういう接触はごく希薄で、面と向かったコミュニケーションも少なく、どちらかというとそれらを回避している。一緒の「空間」にいるけれど、直接接触はしない」(中野[1991:173])

また、80年代にヘッドフォンステレオやコンピュータゲームが流行した時にも「メディアによる若者の個人化」がよく言われた。このように、若者とはもともと人と接することが下手な「臆病」な存在であったはずである。もちろん、携帯電話の利用について議論される若者の心性に関して事実を言い当てている部分も少なくないだろう。しかし携帯電話の普及に伴いこの手の批判が増え続けているのは疑問である。青年期に特有とも言えるこれらの心理的な部分を特殊化して、携帯電話の利用を批判する現象が起こるのはなぜか。

中野収 1991 若者文化人類学
東京書籍