マルコ式戦略的ブランディング
ケビン・レーン・ケラーの著書である戦略的ブランド・マネジメントによれば、「ブランディングは精神的な構造を創り出すこと、消費者が意思決定を単純化できるように、製品・サービスについての知識を整理すること」と定義されます。
しかし、これは容易なことではありません。消費者に対して提供者は常に製品・サービスについての知識を提供し続けなければならず、またその整理を手伝わなければならないからです。
ある程度、消費者に対して製品・サービスの知識をまとめ整理した状態で情報を提供する手法としてマスメディアがありますが、効果的である反面、費用も決して安くはありません。また、それを継続的に行わなければならないということもあり、大企業でしか実行は出来ないと考えられます。ただし、大企業では既にブランドが出来上がった状態なので企業をブランディングするというよりは製品やサービスをブランディングすることに使っているようです。
ブランディングの最大のメリットとしては、消費者の意思決定を単純化できることです。
その最たる例として、プラダやヴィトンなどに代表される有名ブランドの製品です。ご周知の通り、決して安い製品ではありませんが、非常に多くの女性に愛用されています。価格だけなら、大手量販店で販売している製品を選びますが、基準は価格ではないのです。
このことからもわかるように特に日本人において、ブランディングは意思決定を単純化できるというだけにとどまっていません。「景気に左右されず、価格競争にも負けない製品・サービスを提供できること」それが、日本においてのブランディングの意味です。
また、ケラー氏は「ブランディングにとっての鍵は、ある製品カテゴリー内で消費者が知覚するブランド間の差異である」とも言っています。この視点によって、ブランディングとはロゴやブランド・ネーム、パッケージなどのブランド要素を整理し、ブランド価値を高めていくことになります。
確かに、それは第一歩ですが、次に行うべきことは製品・サービスの知識を整理することです。これによってカタログというものが準備されます。カタログに製品・サービスの知識を整理することによって、消費者にわかりやすく情報を提供することが可能となります。
ただ、紙媒体には掲載できる情報量というのが決められてしまうため、情報を常に吟味しなければなりませんが、大企業でない限り時間的にも費用的にも限界があります。
ですから、多くのブランドは時間をかけながら消費者に認知してもらってきました。
でも、それは、インターネットが普及する以前の話です。
インターネットでは、その時間を短縮することが可能です。
冒頭で引用した文によれば、製品・サービスを整理することと精神的な構造を作り出すことによって消費者の意思決定が単純化できるともいえます。
ポイントは、情報の整理と精神的な構造です。
ITの技術を使えば、情報の整理は非常に簡単に行えます。たとえば、情報に優先順位をつけることによってそれは具現化できますし、アーカイブを利用することによってより消費者にとって必要な情報を提供することも可能です。実際に消費者が手にとってみることが一番ですが、まずは多くの消費者が認知し、知識の整理を行うことが重要です。
次のポイントである精神的な構造とは、消費者にとってそれが良いものと感じさせることになります。その際たる例としてディズニーランドが挙げられます。
ディズニーランドでは、利用者に対してすべてが良いものと感じさせることに成功しています。近年、CS(顧客満足度)というものが盛んに叫ばれていましたが、ここでは、常に顧客の感動を最優先に考えています。そのことは、ディズニー7つの法則で詳しく書いてあるため、割愛します。
精神的な構造は、ストーリー性を持たせることが重要です。そのストーリーから製品やサービスに対して思い入れという現象が起こると精神的な構造は容易に確立します。その思い入れが強く、そして多くの人に浸透するとブランドは確立されるのです。
インターネットで具現化する手段としては、何か一つ製品やサービスの過程を載せることなどがあげられます。通常は、そうしたストーリーを人の手で伝えていくことが一番効果的ではありますが、とりあえず掲げておくことで後から浸透させる(顧客から浸透させていく)という方法も効果はあると思います。