1997.10.21

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最近、どうも日記を書くことが減ってきている。毎日書かなければならないものをあまり書かないのは良くないと思うが、忘れてしまうのだ。
それは、習慣づいていないからだと思うのだが。
文章がうまく書けるようにと始めた日記なのに、これでは意味がない。

今日の出来事を書くこともよいが、最近思っていることをまとめて書くことのほうが、考えもまとめられ練習にもなるので、今後はそうしたことを心がけて書いていこうと思う。
そして、今日はその第一弾だ。

最近TVでは、よく「世間は病んでいる」とか「日本は病んでいる」などと耳にするが、いったいどうしてなのだろうか。まぁ、いろいろな考え方はできるが、ここは自分流に考えをまとめておきたいところだ。

現在、「日本が病んでいる」ということは「以前はそうではなかった」からそういう意見が出るのだろうとおもう。(昔のことはよくわからないが)
そう考えると、少なくとも「日本にも病んでいなかった時代」はあったはずだ。そもそも、日本が病んでいるというのは、日本人の心の問題であって、身体に問題があるわけではないということは、誰もがわかっているはず。
とすると、その心の問題に影響があり、昔はあったが今はなくなってしまっているものはなんだろうかと考えてみる。

僕なりの考えでは、昔はそれなりに宗教的なものを信じる人は多かったはずで、今はそれが少なくなってしまっていることが原因だと思う。
仏教に始まり、神道、土着信仰、アニミズムなどなど。。。

こうしたものへの信仰心がなくなったというよりは、関心がなくなったのだと思う。そうしたものを古臭いだの、時代遅れだの、ばかばかしい発想だのと言って見向きもしなくなった。
ではなぜ、それが原因だと思うのか?
しかし、その前に宗教を定義しておく必要がある。そもそも、宗教は哲学である。哲学には全体哲学と個人性格哲学の2つに分類できる。もちろん、宗教は前者だ。ちなみに、個人性格哲学というものは、僕が名づけた。たいていの哲学者の哲学というものはどうもその人の性格に基づいて形成されている節が多く、自己の考え方を人に示すようなものだからだ。(多少例外はあるにしても)

それに対して全体哲学(宗教)は人々の考え方のもととなる場合が多く、原理原則なのである。全世界の人々は、必ずと言っていいほど何らかの宗教的儀式にかかわっている。そして、多くの人はその宗教とともにあり多くのことをその宗教から学ぶ。またそれが個人を形成する上でも重要な役割を果たしている。たいていの国ではそれは一つであることが多い。
しかし、日本の場合はその多様性には目を見張るものがある。
日本には、もともとアニミズムといって自然のすべてのものを崇拝する慣習があった。その考え方が根底にあったからこそ、多くの他の宗教を受け入れることができた。また、日本においての宗教は政治的に利用されてきたという歴史もあるが、それはまたの機会に譲るとしよう。
多種多様な宗教がまじりあって、日本人的慣習を作り上げている。
年の始めは神社に初詣(神道)に行き、クリスマス(キリスト教)は街が恋人たちであふれ、大みそかは除夜の鐘(仏教)を聞きながら年越し蕎麦を食べる。
年間でも3つもの宗教的儀礼をこなす日本人は、外国の人が見ると、いったい何教なのかと疑問に思うことは間違いない。(クリスマスは本来恋人同士で楽しむものではなく家族でお祝いすることが正しい)

ただし、忘れてはならないのは、そこには理念は全くないということだ。これだけの宗教的儀礼をおこなっておきながら、まったく一貫した理念はない。日本人の多くは形にこだわるとはよく言ったものだ。形式だけにとらわれ、本来の教義をまったく無視している。これはもはや神への冒とくだととらえられても仕方がない。

そうした結果、宗教的価値観は失われてしまった。ニーチェの言葉を借りるならば、まさに「神は死んだ」のである。そして、それが引き起こした代償はあまりにも大きかった。それは、神を冒とくした日本人への罰ととらえるべきなのだろうか。

そして、心を病んだ多くの日本人は、新たな神を探すか(新興宗教への入信)病んだ心のまま社会に解き放たれ、異常な事件を起こす。

心の平安を取り戻すには、まずお寺に行って坊さんの説法でも聞いてきたほうがいいかもしれないが、そうしたことをすること自体を心のどこかで否定している。結局ここでも世間体(かたち)にこだわってしまうのだ。
結局は、精神科医にかかったりしなければならないのだったら、お寺に行っていたほうがいいと思うのだが。

こうした心の問題は、徐々に広がりを見せている。

薬は、自己の自然治癒力を助ける役目だけと言われる。薬のおかげで治ったのではなく、自分の自然治癒力のおかげで治っているのだ。

心の病にも、よく効く薬は存在する。

日本人はなぜ無宗教なのか (ちくま新書)