社会学の目的

 社会学は本来、さまざまな社会現象の実態や、現象の起こる原因を解明するための学問である。社会学の目的として、秩序問題、すなわち社会秩序がなぜ成立しているかについての研究を、とくに重視することもある。これは社会秩序や、何らかの社会への協力行動と関連する研究であり、治安犯罪逸脱行動社会統合利他的行動向社会的行動環境配慮行動研究、社会的ジレンマ研究などと呼ばれる研究分野である。この研究分野は社会心理学小集団実験と関連する研究も多い。

 秩序問題とは別に、産業構造労働市場の構造、社会階層構造、学歴不平等の構造、家族地域社会の構造、権力構造、女性差別や人種差別など、社会の構造について研究がなされることも多い。社会構造やその時代的変化、すなわち社会変動の研究も、社会学の主要な分野の一つであり、主として大規模な調査データを元に、研究成果を挙げている。社会変動研究は、もともとマルクス主義的研究が多かったが、今日ではそのような研究とは別に、脱産業社会におけるさまざまな社会現象とその変化に関する研究が行われている。

 しかしながら、日本では長年、海外の理論を輸入することが社会学の目的とされてきたため、現実の社会現象の解明には、必ずしも積極的でない研究者 も多い。むしろ哲学的議論や、理論のみの研究、歴史や学説史のみを重視する研究も、いまだに多数存在するのが事実である。例えば東京大学や京都大学、早稲 田大学、慶應義塾大学などの伝統ある社会学研究部門では、理論研究者は多いが調査経験は少ない教員が多く、専任教員だけでは社会調査教育や社会調査士資格 に対応できない現実もある。それらの大学では、教員の多くが理論の輸入や解釈を主目的としているため、新しい知見の発見は困難である。そのため国際学会で の発表経験が乏しいか、発表能力がほとんどない教員も多い。このような深刻な事態の背景には、かつて日本の大学に予算や調査能力がなかった時代には、理論 研究のみしかできなくても、やむをえなかったという事情もある。しかし今日では、現実社会と距離のある抽象的な理論社会学研究に対しては、かなりの社会的 批判が存在するのも事実である。本稿の記述も以下を見ると歴史的な内容が多く、大規模な社会調査の内容には対応できていないのである。残念ながら日本の社 会学は政策への影響力は少なく、多くの社会学者には政策形成や提言能力はない。しかし近年では、社会調査の実施能力や、現実のデータを分析する研究も重視 されつつある、と言えなくもない。以下のように、日本の社会調査の中には、国際的に高く評価されているものもある(社会学の方法の項を参照)。最近では社会調査士資格など、社会調査法への対応の努力もあり、大学によっては充実した教育を行っている。東北大学や関西学院大学、大阪大学などは社会調査に関する研究教育が評価され文部科学省COEに採用されたほか、国際学会での発表実績もある。

出典:ウィキペディア フリー百科事典

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