文化人類学

文化人類学(ぶんかじんるいがく)は、社会科学のひとつである、人類学の一分野である。人類学は一般に人類の進化生物学的側面を研究する自然人類学とその社会的・文化的側面を研究する文化人類学に大別される。文化人類学と言う学問分野はアメリカにおいて用いられてきたもので、イギリスおよび多くのヨーロッパ諸国では社会人類学の名称が用いられている。両者の間には歴史的な相違が存在していたが、現在では研究内容がほぼ収斂し同じ分野の異称であると考えて差し支えない。またヨーロッパ諸国や日本においては民族学(Ethnology, Ethnologie)の名称も用いられている(民族学を一分野とする場合も多い)。また民俗学Folklore)は隣接分野である。

広く捉えると文化人類学は、人類を進化の過程によって形作られてきた生物学的側面から捉える自然人類学に対して、自然とは対比される文化という側面から研究しようとする学問分野である。ここで言う文化とは進化の過程を経て形成される遺伝形質ではなく、人類が後天的に学習した行動パターンや言語、人工物の総体を指す。このような広義の文化概念をとった場合、文化人類学には言語学考古学が含まれることがあり、アメリカではこのような広義のくくり方が一般的である。

これに対して狭い意味では、民族社会間の文化や社会構造の比較研究として定義される。社会人類学や民族学というラベルはまさにこの狭く定義された文化人類学と同義である。ブロニスロウ・マリノフスキー以後、この分野では数ヶ月から数年に渡って研究対象となる社会に滞在し、メンバーの一員として生活する参与観察フィールドワーク《実地調査》の1手法。人類学者が用いるフィールドワークには、観察、参与観察、面接インタビュー》、心理テストなどの手法がある)の手法を用いることが一般的となった。

このフィールドワーク(実地調査)においてどんな調査結果が得られるかについて、調査する者の価値観、調査対象を好きか嫌いか、調査者と調査対象の間に生まれた関係ラポール、rapport)、などが関係するところが、文化人類学が持つ課題である。さらに1970年代頃から、調査される側の迷惑、調査する側の倫理、が課題としてクローズアップされている。アメリカ人類学会には倫理委員会 ( Committee on Ethics ) が設けられ、1975年に綱領「職業的責任の原理」が、1984年に「倫理コード」が作成された。日本では1988年の第25回日本民族学会研究大会にてシンポジウム「民族学と少数民族-調査する側と調査される側」が催され、これをきっかけに研究倫理委員会が設置された。

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