多様化

1960年代に機能主義からの離反が起きた後、いわゆるミニパラダイム(この語法は本来は誤りである)の乱立と称される時代を迎えた。現象学的社会 学、エスノメソドロジーなどが出現し、社会学が多様化し、研究対象となる領域も拡大はしたが、同時に社会学というディシプリン内部での対話の共通基盤が失 われもした。上述のような歴史的文脈が忘却されると、機能主義に対するカウンターとしての意義をもった諸ミニパラダイムは逆に混迷を深めた。一方で、(クーンが本来意図した意味での)パラダイム、すなわち経験的統計データに基づく調査研究は疑問視されることなく確立していったが、他方でかかる研究のよって立つべき思想・視点、つまりは社会学の独自性とは何なのかという問題は依然として不明なままに推移している。

1960年代にパーソンズのもとに留学し、ドイツに帰国後、社会学者として活動を開始したニクラス・ルーマン、1990年代末以降の英国ブレア労働党政権のブレーンとして名を馳せたアンソニー・ギデンズらは、それぞれ異なった系譜からではあるが、政策科学としての社会学という立場を打ち出した。すなわち、ルーマンの場合であれば、科学的にSollen(~すべき)を言わなければならない行政学の伝統を継承する形で、ギデンズの場合は、社会問題への関与をことするイギリス社会学の伝統とリベラリズムの政治思想への関わりから、そうした方向性をとり、それぞれに反響を呼びをしたが、広がりをもつものにはなったとはいえない。

わずか200年ほどという歴史は、学問が自らのアイデンティティを獲得するには浅すぎるのかもしれない。いずれにせよ、クーン的意味でのパラダイムが揺るがない一方で、思想的・理論的空白が存続しているのが現状である。

出典:ウィキペディア フリー百科事典

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