Simple is best

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シンプル・イズ・ベストなどとよく言われますが、簡単な事などそんなに多くありません。世の中複雑にできているのです。
しかし、もう一方では、世の中が複雑だからこそ、簡単なものは、受け入れやすいとも言えます。

文章も、簡単なものほど多くの人に受け入れられます。よく、執筆の指南本では、小学生5,6年生ぐらいでも読めるような文章にするといいと言われています。

日本は、他の国に比べると知的水準が高いと言われていますが、それは、読み書き、そろばんの事で、考え方や理解能力のそれとは違います。本当の意味での知的レベルとは、考え方や理解能力の事をさしています。いわゆる「知恵」のことです。

前職では、人材に関わる仕事をしていましたが、そのときに読んだ「ビル・ゲイツの面接試験」という本には、その答えのような事が書いてありました。
また、コンサルティングという仕事に置いても、同様のスキルが要求されます。

それは、「単純な問題ほど、答えまでの過程は複雑で、複雑な問題ほど答えまでの過程は単純」ということがポイントです。また、解けない問題というものも存在していますが、ポイントは、その解けない問題に対してどう向き合うか?という姿勢の部分がポイントです。

ちなみに、数学では今でも解けない問題がいくつか存在します。(回答できれば1億円です:数学21世紀の大難問)これらに共通しているのは、問題自体が非常に単純ということです。
例えば、「どんな掛け方をされた輪ゴムも無理なくはずせるような、手の上に乗る1つの物体は、滑らかに球に変形できるはずであるという予想を数学的に証明しなさい」という問題は、一見すると簡単そうに見えますが、ポアンカレ予想と呼ばれる、ミレニアム賞問題の一つです。(単連結な3次元閉多様体は3次元球面S3に同相である)

いきなりですが、ここで問題です。

一辺が2cmの正四面体の体積を求めなさい。

解けるでしょうか?

実は、正四面体の体積問題には、いくつかの解き方があります。一つは、底面積×高さ×1/3。正四面体は、立方体の四つの角を切り落とした残りの形です。
こっちから求めれば、面倒な計算をしなくても、暗算でできてしまいます。

二つ目は、下記の公式を使います。

aには一辺の長さが入ります。

三つ目は、三平方の定理を利用した解法があります。この解き方で進めていくと、最終的には、二つ目にあげた公式が出てきます。しかし、これは最も計算が多く一番めんどくさい解き方です。

2つ目の公式を使えば、計算も楽で簡単に答えを出す事が可能です。ここで問題になっているのは、「正四面体の体積を求める」事なのですから、答えが合っていれば、どんな解き方をしてもよいのです。はじめにあげた解法も簡単に計算可能ですが、正四面体だけを考えているとこの考え方にまで行き着きません。問題に対するパラダイムシフトが必要です。しかし、答えは正確に出せます。

数学においては、答えが合えば正解ですが、問題を出す側としては、その考え方に興味を持っているのです。しかも、社会生活においては、この考え方の方が重要だったりします。
知恵として一つ目の考え方を知っていれば、簡単に答えを出す事が可能でしょう。豊富な知識があれば、二つ目の公式だけで解いてしまうかもしれません。三つ目の方法は、そうした事をせず、知っている知識だけで対応しなければならないやり方です。「単純な問題ほど、答えまでの過程が複雑になる」理由には、そうした方法論でしか、その問題に対処できないからです。
より知恵をつけるか、もっと知識を貯えるかすると、無駄な計算をする時間が省けますし、物事をよりシンプルに進める事ができるのだと思います。