player or manager

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以前、独立した知人と交わした会話です。

A氏:  「マルコさんは、いつ独立するの?」
マルコ式:「いや~どうですかね~。リスクを考えると、なかなか難しいですよね。」
A氏:  「僕は、来月から独立するけど、結局仕事のやり方は2通りしかないんだよね。」
マルコ式:「と言うと・・・?」
A氏:  「人に使われて仕事するのか?人を使って仕事をするのか?
      僕は、これまで人に使われて仕事をしてきたけど、これからは人を使って仕事するほうになる。」
マルコ式:「確かに、そのどちらかしかないですよね。」
A氏:  「マルコさんも、早く人を使う側にまわるといいよ。」

独立という一つの区切りで、いろいろと不安もあったのでしょうが、そうしたこともひっくるめて
独立した彼は、非常に勇気があると感じました。
そのときは、「独立=人を使って仕事をする」と言うような極端な話だったので、独立しなければ
そうした仕事が出来ないと思ってしまいました。
しかし、部下を持つことによって、「サラリーマンでも十分人を使って仕事は出来る」と言うことを
思い知らされました。(もちろん、ちゃんと人が使えることが大前提ですが)

部下を持つまでは、すべて自分で処理しなければなりません。仕事自体は大変でしたが、自分の責任の範疇だけで
ことはすんでしたため、十分でした。
しかし、「会社から好きなように使っていいよ」と人をあてがわれると、自分の責任プラスその部下の責任まで
持たなければならず、初めのうちはどうしていいのかわかりませんでした。

これは、サラリーマンなら誰でも経験するよくある話だとは思います。

いきなり上手に人が使える人なんて、いません。
「天は人の上に人を作らず、人の下に人を作らず」という教育をうけてきた人はなおさらです。
上も下もないというような考え方が、自分が下のときは上に対する愚痴を言い、自分が上になると
どうしていいのかわからない。という状況に陥ってしまいます。

別に教育が良いとか悪いとかという議論をここでする気はありませんが、戸惑うのは事実です。

システム開発の世界で、キャリアアップというと、

PG(プログラマー)→SE(システムエンジニア)→PM(プロジェクトマネージャー)

というようなかなり明確にジョブが分けられます。
ゲームのジョブチェンジのように上位ジョブへキャリアを積んでジョブチェンジしていくようなところは、
IT業界ならではという感じもしますが、実は、PGのままの人もいたりします。
35歳PG限界説という話もあるので、大抵35歳程度になるとSEという仕事に移行するケースが多いと
思われがちですが、40歳になっても50歳になっても現役プログラマーと言う人はいますし、そうした人は
逆にスーパーPGなどと呼ばれているケースもあります。20年以上一つのことだけをしていれば、もはや
職人です。そんな人たちは、一切の無駄のない芸術的なコードを書くので、仕事は速いし正確で、
どんな仕様にも対応できます。

ただ、こうしたことは一つの業界にだけ存在するものではありません。
無駄を嫌うIT業界だけが、そんなにわかりやすい図式として説明できるだけで基本的には、どんな業界に
おいても変わりはないのです。
通常の会社で先ほどの図を役職ごとに当てはめると

平社員(PG)→課長(SE)→部長(PM)

となるわけで、別にたいしたことはありません。

ただ、IT業界と従来の企業体質の違いは、年功序列によって左右されるかどうか?と言うところにあります。
年功序列の企業では、適正年齢がくれば課長へ昇格するケースが多いです。もちろん、それまでの実績に応じて
スピードには開きがあるでしょうが、一生平社員のままというのは、かなり稀有なケースです。
そこが、年功序列のいいところでもあり、日本の経済成長の支えにもなってきました。
もちろん、実績のある人はとんとん拍子で出世していくわけなので、最後は社長というポストにもつけます。
ただし、これは仕事の実績(Playerとしての才能)だけで評価しているため、管理が出来るかどうかはまったく
考慮されていません。

実は、ここに大きな問題点があります。
Playerには、必ずしもManager(管理者)としての資質が備わっていないということです。
スポーツの世界においてMVPの選手が、必ずしも名監督になるとは限らないのと一緒です。

極々、当たり前の話ですが、その点に気づいていない組織は非常に多いのではないでしょうか?
企業統治(コーポレート・ガバメント)と呼ばれる組織形成が一時期はやったこともありましたが、
管理体制の問題点を抱える企業においては、常にそうしたことに敏感になっていることがわかります。
(しかし、実際はアメリカ型の経営手法はあまりうまくいかないケースが多いようです)

Playerとしての資質は、やらせてみれば一目瞭然です。結果だけを見て評価できる為、わかりやすいです。
しかし、Managerとしての資質はかなり見えずらいです。管理者経験がある人であれば、経験者として優遇され
ますが、生え抜きで入社した人、もしくは管理者経験のない若い人材などについては、履歴書上ではまったく
見えません。

また、はじめに書いた独立すると言うケースでも同じことが言えます。
人を使って仕事をしている人もいれば、ずっと個人事業主と言う人もいます。
IT業界でもスーパーPGという位置づけや、SOHO(個人事業主)としての道もあります。
ずっとPlayerでも、一生その仕事を続けていくことが可能です。

10名以下の会社では、Playerでも十分マネージメントが可能ですが、30名を超えるとPlayerのままでは
管理が出来ません。そこで、管理者の本を読んだり、管理者研修を受けて管理者としての資質を身に着けて
いくわけですが、それでも管理者として向かない人はいます。
Playerとしては、抜群の才能を発揮するが、Managerとしてはどうもうまく出来ない。。。

それは、性格と考え方によるところが非常に多いでしょう。

誰かに任せよう・・・という発想と、丁寧にお願いできる性格。

一番は、人に任せようという発想です。ただし、任せた限りは一切手を出さず口だけはさむようにしなければ
なりません。自分ひとりで何でもこなしてしまうようなPlayerは、そこで手を出してしまいます。
もちろん、手を出せば任せた人に対して失礼ですし、その人自体成長しません。なので結局自分でする羽目に
なり、仕事が倍になります。また、時間も倍かかります。手間がかなり増えます。
そして、上司の自分はこんなことを思うのです・・・
「まったく、仕事の出来ない奴だ。自分でやったほうが速いのに・・・。いつまでかかっているんだ?」
「こんなこともできないのか?だったら、いったい何が出来るのか?」
「もう仕事を任せてはおけない。」

確かに、部下が本当に能無しと言う可能性もありますが、初めて仕事をした時、
自分が部下だったときのことを考えれば、上司に同じように思われていたかもしれないと言うことに
気がつかなければなりません。みんな始めは、何にもわからないのです。
初めからわかったつもりの若手が、実は一番危険だったりします。わかったつもりで、大きなミスを犯すからです。
経験則は、そうした失敗を積み重ねて、蓄積されていくものですが、
会社が傾くほどの失敗でない限り、多めに見なければならないと言うのが、上司の務めだったりもします。
また、そうした自体を未然に防ぎ、大きな失敗を細かな失敗でカバーするということもできます。
見えない小さな危険性を、失敗と言う形で表面化させてしまえば、実は大きな失敗にはつながりません。
大きな失敗と言うのは、見えない小さな危険性をそのまま放置しておくことにあります。
これはハインリッヒの法則と言いますが、大惨事を防ぐにはそうした見えない小さな危険性を表面化していくことが
重要です。

父親に、仕事を進める為の三大自己管理を聞いたことがります。
「健康管理」・・・自分自身の健康について
人から使われる場合でも、自分が人を使う場合でも体が資本ですから、この管理だけはしっかりしておかなければなりません。
「資産管理」・・・自分のふところ状況について
自分の貯金やお金の使い方についてですが、会社という大きな枠組みでもその考え方は応用できます。
「業務管理」・・・仕事の進め方について
効率よく仕事を進められるようにしなければ、いつまでも残業しなければならず、結局健康をも損ないます。
会社の生産性を上げることという視点で考えれば、個人だけにいえることではありません。

自己管理が出来ない人が、他人を管理できないと言うのが父親の持論でした。(もうすぐ退職ですが生きてます)